研究課題
平成25年度では、研究してきた音圧センサを使って室内の超音波音源定位を確立する予定だったが, カンチレバーの周りのギャップ(隙間)を非常に小さく(数μm)することにつれて、気圧の僅かな変化に対してカンチレバーが非常に敏感に反応することを発見した。この現象をさらに研究すればインパクトの高い研究ができるだろうと確信し、研究計画を変更して、MEMS気圧センサの研究に取り組み、博士号を取得した。空気圧を計る圧力センサは、カーナビゲーションや運動ログ取得のため、高度・高度差を計測するデバイスとして期待されている。従来の圧力センサは、密閉された基準圧力室の一部であるダイアフラムが、圧力によって変形する量を電気的に計測している。しかしながら、ダイアフラム型のセンサでは、圧力に対する感度と構造強度とがトレードオフの関係にあること、密閉基準圧力室を形成するためのプロセスの手間がかかることの課題があった。これに対して、本研究では、静的ではないが、比較的小さな周波数まで圧力変化が計測できるセンサを提案し、その特性を確かめることを目的としている。本研究で提案する圧力センサは、ねもとにピエゾ抵抗をもつカンチレバーで、その周りと基板との間に微小な隙間が存在する。隙間が微小であれば、ここを流体が通りにくくなり、カンチレバーの下部に設けられた空気室と外部との間の圧力差が保たれ、その圧力によってカンチレバーが変形するという特徴をもつ。カンチレバーの変形は、カンチレバーねもとに形成されたピエゾ抵抗の変化によって感度よく検出でき、カンチレバーの材料が単結晶シリコンなので、圧力によって大きく変形しても破壊しない。よって、本研究の提案が、ダイアフラム型の圧力センサがもつ課題を解決する方法の一つとしている。本研究で提案したセンサのSN比を評価する実験では、隙間1μm、空気室の体積1m1のセンサを容器に入れ、圧力を0.2atmとして、ノイズの密度をスペクトルアナライザで計り、100 Hzまでの周波数で利用するとしたフィルタを仮定すると、センサの計測分解能は10mPaオーダー(1mmの上下運動に相当)であることが示されている。提案したセンサを用いて階段を上るデモを行い、センサの高い応用性も示された。この成果は、カーナビゲーションや人の運動ログに使う圧力センサして応用が期待されるものである。この研究成果をApplied Physics Lettersの論文誌に投稿してアクセプトされ、またこの研究に関連する知財を特許として申請して高く評価されている。
(抄録なし)
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Applied Physics Letters
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