研究概要 |
Callipeltin類を合成する上で必要となる異常アミノ酸D-alloThr並びにFmoc-D-alloThr(tBu)-OHを簡便なルートで調製することに成功した.D-alloThrの市販品は非常に高価であり大量に入手することは困難であるが,今回,L-Thrを酸性条件下異性化,分離することで容易にD-alloThrを得ることができた.さらに側鎖保護基の導入を検討した結果,安価な試薬を用いてFmoc-D-alloThr(tBu)-OHに導くことができた.今後のD-alloThrの供給に有効なルートであると考えられる. また,callipeltin Bの環化前駆体であるcallipeltin Mの固相全合成を行った.酸条件に不安定なβ-MeOTyrを含んでいるが,以前の知見から25%TFA/CH_2Cl_2の条件で脱保護することに成功し,callipeltin Mの固相全合成を達成した.また,callipeltin Bの全合成に向けた縮合条件を最適化することができた. この結果を踏まえて,callipeltin Bの合成に取り組んだところ,環化部位をMeAlaとβ-MeOTyrとした合成を進めていく必要があることがわかった.さらに,最終脱保護においてArg側鎖保護基のPbf基がはずれにくいということが明らかとなった.よって今後は,Arg側鎖保護基ならびに脱保護条件の検討を行い,最適化することでcallipeltin類の合成に応用できるものと考えている. 一方で,合成したペプチドの評価の一つとして子宮頸癌細胞HeLaを用いた細胞毒性評価を行った.はじめに培養法並びにアッセイ法を確立し,次に異常アミノ酸の導入率を変えたcallipeltin Bアナログ体,デプシ部をアミドに変換したものや環の大きさを変えた環状ペプチドについて評価した.その結果から,毒性を示すためにはdiMepyroGluが必要であることが推測された.今後アナログ体を合成する上で着目すべきアミノ酸を見いだすことができ,阻害剤の探索に向けた取り組みにも有力な知見を与えたと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
CalipeltinBの固相全合成を検討したが,最終脱保護条件の検討が必要であることがわかった.よって,最適な条件を見いだし,全合成達成を目指す.また,合成した種々のペプチドに対する評価系の確立に向け,HEK293細胞の培養を行う予定である.現在までにがん細胞であるHeLa細胞の培養・アッセイ法を確立しているため,これら二つの細胞を用いて細胞毒性評価を行う.その後,CCR5を強制発現したHEK293細胞の培養も行い,callipeltin類の阻害能評価に向けたアッセイ法を検討する. さらに,阻害能評価に必要となる蛍光標識低分子化合物の合成にも着手している.蛍光標識導入部位に関する知見は得られていることから,蛍光標識およびリンカーの最適化を行う予定である.
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