研究概要 |
昨年度, callipeltin Bの合成研究の一環としてcallipeltin Bの環化前駆体であるcallipeltin Mの固相合成を検討し, 報告した. しかし, その後の解析において3,4-dimethylpyroglutamic acid (pDME)の立体化学が天然物と一致しないことが見いだされた. そこで, pDMEの可能性のある4つの異性体を合成し, 比較したことで(2S, 3S, 4R)-pDMEが天然体であることを確認した. その後, (2S, 3S, 4R)-pDMEを用いてcallipeltin Mの再合成を行った. Fmoc固相合成法を用いて側鎖保護基を残した保護callipeltin Mを得た後, 50%TFA/CH^2Cl^2により脱保護することでcallipeltin Mへと導いた. 天然物と完全に一致することを確認し, 世界初のcallipeltin Mの全合成を達成することができた. 次に, 保護callipeltin Mを用いたデプシ部での環化からcallipeltin Bの合成を検討した. 環化条件を探索した結果, MSNT/MeIm, 45℃の条件で反応の進行を確認し, 保護callipeltin Bを得ることに成功した. その後10%TIPS/TFAにより脱保護することでCallipeltin Bに導くことができた. 天然物及び先の全合成例であるLiptonらのものとの比較から一致することを確認し, 世界で2例目となるcallipeltin Bの全合成を達成した. 一方で, これまで環化部位をMeAlaとβMeOTyrとしたルートからcallipeltin Bの合成も検討してきた. しかし, 種々のスペクトル解析から環化反応時に副反応が生じ, 望む環化体へと導くことが困難であることがわかった. よってこのルートでの合成はβMeOTyr部をL-/D-Tyrに置換したアナログ体には有効だが, βMeOTyrを含むアナログ体およびcallipeltin Bの合成には適さないことが明らかとなった. 以上の結果から, callipeltin Bならびにアナログ体の合成ルートを最適化することができた. 今後は合成したペプチドの細胞毒性評価を行う予定であり, 阻害剤探索に向けた取り組みにも有力な知見となると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
Callipeltin Bの全合成を達成することができたことから, まずはHeLa細胞及びHEK293細胞を用いたcallipeltin Bの細胞毒性評価を行う. また, アナログ体を含めたその他のcallipetin類についても同様に評価し, がん細胞と正常細胞との活性値の比較も行う予定である. その後CCR5を強制発現したHEK293細胞の培養を行い, callipeltin類の阻害能評価系の確立を目指す. さらに, 阻害能評価に用いる蛍光標識低分子化合物の合成も検討中である. 蛍光標識並びにリンカーの最適化を行い, callipeltin類への導入を検討していく.
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