研究概要 |
1. コラゲナーゼ微量投与によるマウス脳内出血モデルマウスを用いて、脳内出血後の内因性レチノイドシグナルの変化を検討した。出血傷害後のレチノイド受容体(RAR)の分布を検討したところ、脳内出血3日後における血腫周縁部で活性化したミクログリアにRARαが、脳内出血1,3日後に血腫周縁部でアストロサイトにRARβが発現していた。血腫中心部に残存する神経細胞細胞においてもRARβの発現が認められた。さらに内因性レチノイドシグナルに関与する因子の発現量を検討するためにリアルタイムPCRにより検討を行ったところ、レチノイド産生に必要な細胞性レチノール結合タンパク1やレチノイン酸変換酵素のmRNA発現量が脳内出血3日後において増加していた。一方、RARα, βのmRNA発現量は脳内出血後6時間後から減少し、長期間減少したままだった。内因性レチノイドである全トランス型レチノイン酸と13シス型レチノイン酸の発現量をLC/MS/MSで検討した。その結果、脳内出血6時間後においてレチノイン酸の減少が認められ、脳内出血3日後までに徐々に回復してくることが認められた。さらに、RAR阻害薬であるLE540 (30mg/kg)を脳内出血惹起30分前から1日1回経口投与し、運動機能障害の程度を検討した結果、脳内出血3日後において運動機能障害の悪化が認められた。これらの結果から、レチノイドシグナルは脳内出血後一過性に抑制され、時間と共に回復することが示唆され、内因性レチノイドは運動機能障害の自然治癒に部分的に関与することが示唆された。 2. 脳内出血に対するレチノイド受容体作動薬Am80およびデキサメタゾンの効果を検討した。デキサメタゾンは脳内出血に伴う神経脱落やミクログリアの活性化、好中球の浸潤を有意には抑制しなかった。一方でAm80は脳内出血24時間後において好中球の浸潤を顕著に抑制した。前年度の結果から、CXCR阻害薬であるレパリキシン(15mg/kg)を1日3回等よした結果、Am80同様に運動機能障害が改善された。すなわち、Am80はCXCL2シグナルを抑制することで運動機能障害を改善することが示唆された。
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