研究課題/領域番号 |
12J08705
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
鍋島 偉宏 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(PD)
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キーワード | 加速器現象論 / ヒッグス粒子 / 暗黒物質 / ニュートリノ / インフレーション |
研究概要 |
本研究の目的は、標準模型では説明できない諸問題を解決可能な新物理模型に対する既存実験からの制限を評価し、その加速器実験での検証可能性を解析することで、テラスケールの新物理学模型を特定することである。 我々は昨年度に、B-L対称性を導入し、type-I seesaw機構を輻射補正で導出する新しい模型を提案した(PhysRevD.85.033004)。今年度はまず、この模型の検証可能性を評価した。その結果、暗黒物質は、重心系のエネルギーが350GeVのILC実験で、右巻きニュートリノは、重心系のエネルギーが1TeVのILC実験で検証できる可能性があることを明らかにした。ヒッグスボソンは、ILC実験のエネルギー分解能を用いると、その質量差が50MeV程度よりも大きければ、LHC実験でのシグナルが二つのヒッグスボソンからなっていることが分かる。これらの結果を合わせ、この模型がテラスケールに実現している場合、LHC実験、ILC実験と宇宙観測実験の結果を合わせ、近い将来検証できる可能性があることを明らかにした。 次に、輻射シーソー模型の枠組みで、インフレーション、暗黒物質、ニュートリノ質量を同時に説明する模型を提案した。この模型でこれら三種類の現象を同時に説明しようとした時、模型のパラメータは非常に強い制限を受ける。 このパラメータに注目することで、この模型が実現している場合、ヒッグスボソンがインフレーションで重要な役割を持てるかどうか評価した。その結果、重心系のエネルギーが500GeVのILC実験でこれを直接的に検証できる可能性があることを明らかにした。 これらの研究成果は、論文に投稿するだけでなく多くの機会で研究発表を行った。今年度この研究について国内外問わず16の機会で発表を行い、多くの素粒子論研究者と議論し、研究内容を理解して頂いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、新物理模型に対する既存実験からの制限を評価し、その加速器実験での検証可能性を解析することで、テラスケールの新物理学模型を特定することである。第1年度は、多くの未解決問題をテラスケールで同時に解決可能な輻射シーソー模型に注目し、二つの模型でその検証可能性をそれぞれ評価できたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度、CERNで行われたLHC実験でヒッグス粒子と期待される粒子が発見された。この粒子が標準模型のヒッグス粒子であるなら、標準模型は100GeVスケール以下の物理を説明する模型として確立される。今後、新物理模型はこの粒子の性質を説明する必要がある。さらに、現在重力波などの様々な宇宙観測実験も行われつつあり、未知であった様々な現象が明らかになると期待される。これらの実験からの制限を評価し、それを満たすテラスケールの新物理模型を探索する。さらにその加速器での振る舞いを解析する。これにより、近い将来新物理模型が加速器で特定できるか探究する。
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