研究課題/領域番号 |
12J08723
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
高橋 拓也 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC2)
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キーワード | ヘリウム4 / 量子固体 / 微小重力 / 冷凍機開発 |
研究概要 |
本年度は航空機のパラボリックフライトにより生じる微小重力環境におけるヘリウム4結晶の低温実験に向けて、新しく希釈冷凍機の作成に取り組んだ。これまで、この航空機実験において我々はヘリウム3蒸発型冷凍機を使用していたが、この冷凍機は600mKの温度までしか得られなかった。更なる低温領域で実験を行うために航空機実験用の希釈冷凍機が必要となり作成するに至ったわけである。 空間的・電力的に厳しい制限がある航空機内で動作するコンパクトな希釈冷凍機、冷却システムを組み上げ、地上で150mK以下の温度を得ることに成功した。この冷凍機はGM冷凍機、液体ヘリウムのバス、1Kポット、分留器、二重管式熱交換器、混合器からなる希釈冷凍機である。 2013年3月、この冷凍機を航空機に搭載し重力変化のある環境で冷凍機の動作テストを行った。パラボリックフライトではμG~2Gの重力変化が発生するが、実験の結果、冷凍機の最低温度部分である混合器の温度はほぼ影響を受けず150mK以下の温度を保つことが確認された。通常、希釈冷凍機は原理的に重力によるヘリウム3/ヘリウム4液体の相分離を利用して冷却を行っており、重力が無くなった時に冷却効果が維持されるかどうかは実際に確認しなくてはわからなかったが、この実験で作られる20秒間の微小重力環境では温度がほぼ保たれることが今回のテストで明らかになった。この成功は我々の研究において、大きな進展をもたらすはずである。 微小重力環境での冷凍機の動作テストと同時に、150mKのヘリウム結晶の観測実験にも成功した。今回の実験では、微小重力環境において150mKのヘリウム結晶形と結晶界面の超音波への応答を観測したが、それらは地上における結果とも、微小重力環境で過去に行った600mKのヘリウム結晶における実験結果とも明らかに違っており、非常に興味深い結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度中に作成する予定であった航空機実験用の希釈冷凍機が完成し、微小重力環境での動作テストでも地上と同等の性能で運転することが確認できたため。最低到達温度も予想以上のものを得ることができた。 また、冷凍機の動作テストと同時にヘリウム結晶での実験も微小重力環境下で行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
2013年3月に行った微小重力環境下でのヘリウム結晶の観測実験で得たデータの解析を進める。 それと並行し、冷凍機の改良を進め、最低温度を下げたいと思う。 また、ヘリウム液体によってのみ囲まれたヘリウム結晶の平衡形を観測できる仕組みを備えたサンプルセルの作成に取り組みたい。これには針を使ってサンプルセルの中心部分で核生成を行えるものを考えており、現在すでに製作が進んでいる。
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