研究課題
前年度は、微小重力環境において界面自由エネルギーが決める4He結晶の平衡形をマクロスケールで観測し、ファセットと呼ばれる平らな面が平衡形上ではこれまで観測されていなかった位置に現れることを発見した。しかし、この位置のファセット(s面)は成長形では観測されており、平衡形でも現れることは予測されていたことであった。結晶の温度はおよそ150 mKであった。今年度は冷凍機を改良し、より低温で実験をすることで、予測されていない位置に新しいファセットが現れないか検証しようとしたが、実験装置(希釈冷凍機)の不具合のため一年間をその修繕に費やすこととなってしまった。修繕は未だ続いている。できる限り早く修復・改良し、実験を再開したい。一方、前年度のデータを分析することにより興味深い事実がわかった。ファセットは4He結晶の平衡形においては結晶サイズの1/10以下のサイズでしか現れてこないはずであるが、前年度に得られた平衡形には結晶サイズの1/2程度の大きさにも見える平らな面が観測され、疑問が残っていた。我々はファセット近傍の平衡形を記述する理論式と実験データを比較することによりこれを解決した。比較の結果、観測されたファセット近傍の結晶形は理論的に予測されるものと良い一致を見せ、微小重力実験において結晶が平衡形に到達していることが支持された。さらに、ファセットが大きく見える問題ではファセット近傍に現れる微斜面と呼ばれる小さく傾いた面が広範囲に現れているためであることが明らかになった。原子スケールではファセットと明確な区別がつく微斜面だが、マクロスケールに見てしまうとファセットと区別がつかず、微斜面領域もファセットのような平らな面であると認識しまい、結果、ファセットが大きく現れているように見えていたのである。この事実は今後新しいファセットの観測をしていく過程でファセットの有無を判断する大きな助けになると期待される。
(抄録なし)
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Int. J. Microgravity Sci. Appl.
巻: Vol.31, No. 2 ページ: 47-54