研究課題/領域番号 |
12J08764
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒巻 吉孝 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ホウ素 / ラジカル / ボリルアニオン / ボリレン / 還元 / 一電子移動 / 水素 |
研究概要 |
当研究室ですでに合成が報告されているボリルアニオン等価体であるボリルリチウム、ボリルマグネシウムプロミド、ボリルブロモキュプラートと水素との反応を検討した結果、ボリルリチウムとボリルブロモキュプラートは水素と反応した。生成物はボリルリチウムは骨格由来の対応するジアミノボランと水素化リチウムを与え、ボリルブロモキュプラートはジアミノボランと0価の銅が生成した。これはボリルアニオンが求核剤としてのみではなく一電子移動還元剤としても働くことを示しており、グリニャール試薬などのカルボアニオンと同様の性質を示すことを示唆しており、ボリルアニオン種の性質に関して新しい知見が得られた。 塩基安定化ボリレンの合成に関しては前駆体の候補であるプロモボレニウムカチオンの合成に成功した。ボレニウムカチオンを種々の一電子還元剤により還元することで目的とする塩基安定化ボリレンの合成を検討したところ、混合物ではあるものの塩基安定化ボリレンと思われる化合物のシグナルを11BMRにより観測した。これは塩基安定化ボリレンの単離に向けて期待の持てる予備的検討であり、今後は反応温度、溶媒、還元剤などの条件を最適化していくことで目標を達成できると考えている。 塩基安定化ボリルラジカルの合成に関しては、β-ジイミナート配位子を持つジフルオロボランを合成し、それを一電子還元することで塩基安定化ボリルラジカルを極限構造の一つとして持つ含ホウ素複素環ラジカルを合成した。このラジカルは過酸化ベンゾイルといった含酸素化合物反応しとB-0結合生成を伴う生成物を与え、ボリルラジカルとして反応したと考えられる。これまで単離例のなかった二重項塩基安定化ボリルラジカルの反応性を解明して行く上でさきがけとなる重要な成果の一つだと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ボリルアニオンと塩基安定化ボリルラジカルの系については計画通り順調に進行し、研究としてほぼ完成の段階にまで達している。塩基安定化ボリレンは前駆体の合成に手間取ったために当初の計画よりやや遅れてはいるものの順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は塩基安定化ボリレンの合成に注力する。前駆体であるボレニウムカチオンの還元条件および配位子上の置換基の検討を行う。また単離そのものが困難であると判断された場合は系中で発生した塩基安定化ボリルに対して一価の金などの遷移金属錯体を添加することで塩基安定化ボリレン錯体としての単離を試みる。
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