研究概要 |
本年度は, 現地観測, 水路実験, 理論解析, 文献調査等を精力的に行い, 以下のような成果を得た. まず, 多摩川水系浅川で土砂動態の現地観測を行い, 交互砂州という河川地形が, 従来下流方向へ移動すると言われていたものが, 対象区間の交互砂州では移動していない事を明らかにした. これは, 元々網状流路であった浅川の河床形態が, 1970年代に堤防の整備に伴い交互砂州に移行した事と関連していると考えた. 以上の現地観測結果と, 既往の実験結果等とを照らし合わせると, 河床形態には, 移動する交互砂州, 移動しない交互砂州, 網状流路, という三種類が存在すると考えられた. そこで, これらの河床形態はどのように違い, また何がそれらの違いを規定し, 境界はどこに存在するかという事を明らかにする必要があると考えた. そこで, 水理実験を繰り返し行った. その結果, 一定の流量で長時間通水を続けた場合には, 従来網状流路が形成されるといわれてきた領域においても, 網状流路が交互砂州に移行するという事が明らかになり, その交互砂州は浮洲を形成して砂州の移動を停止した. さらに, 砂州の移動が停止する場合, ある値以上に川幅水深比が大きくなると, 非定常流量下で網状流路が形成された. ただし, 無次元掃流力が0.06以下に低下した場合のみにこの現象が生じる. 以上の実験によって, 移動する交互砂州, 移動しない交互砂州, 網状流路という3つの河床形態の形成境界を明らかにし, それが川幅水深比と無次元掃流力に依存する事を明らかにした. この境界は50箇所以上の実河川データとほぼ一致した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は河道特性による砂州の状態の違いに着目していたが, 河道特性という漠然とした河川の個性を, 礫径, 勾配, 川幅, 流量という4つのパラメータで表し, そこから無次元掃流力と川幅水深比を算出する事で, 砂州形態を判別できるという事を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
移動する交互砂州, 移動しない交互砂州, 網状流路, という三種類の河床形態の境界は明らかにできたものの, なぜそこに境界が存在するのかという理論的な答えは未解明のままであり, 説得力に欠ける部分がある. これらの境界を明確にすることは, 今後の河川整備において重要な知見とあるため, 今後は理論解析や数値シミュレーションを用いつつ, これらの境界の存在理由を明らかにする.
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