研究課題/領域番号 |
12J08844
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
松田 翔一 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 電気化学 / 代謝制御 / 生体内酸化還元バランス |
研究概要 |
申請者は、電気化学的手法を用いて、微生物体内の酸化還元雰囲気を制御し、そのアウトプットとして微生物によるCO2還元や有用物質生産効率の飛躍的向上を目指す。その目的の下、(1)電極電位操作による遺伝子発現制御手法の確立、(2)微生物体内の酸化還元状態操作手法確立、に関する研究を行う。その後、この2つの手法を組み合わすことで、システム工学的観点から、微生物のもつ物質・エネルギー変換特性の最適化を試みる。メタノール生産菌をモデル系として、微生物に対して外部から電位変調を介して人為的な摂動を与えることで、メタノール生産能の向上を目指す。本年度では、目的を達成するために(1)電極電位操作による遺伝子発現制御手法の開発を目指して研究を行った。その第一として、微生物内膜に存在するキノンプールと電極を電気化学的に接続する手法の開発を行った。具体的にはオスミウムポリマーを電極上に担持させた系において微生物・電極間電子移の動反応の電気化学的解析を行った。その結果、微生物体内の呼吸鎖電子伝達鎖とのマッチングのよい酸化還元電位を持ったオスミウムポリマーを選定することができた。その後、光合成細菌のクロロフィル発現制御系をモデル系として選択し、酸化還元雰囲気制御下で微生物の培養を行い、紫外可視分光法による吸収スペクトル測定によりクロロフィルの発現の定量を行い、その酸化還元雰囲気依存性の検討を行った。その結果、遺伝子発現レベル・タンパク質レベルでクロロフィル発現量の変化が観測された。以上の結果から、電気化学的手法により生体内の酸化還元雰囲気を制御することで、微生物代謝を遺伝子発現レベルで制御する手法が確立されたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初目的としていた、電気化学的手法による微生物代謝の遺伝子発現レベルでの制御を示唆する結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
代謝物レベルでの変化をHPLC,GCMSといった網羅的分析手法を用いることで解析を行う。また、代謝制御機構の解明を目的として遺伝子破壊株を用いた実験を行う。平行して代謝産物がより魅力的なメタノール生産菌の系に、確立した電気化学的代謝制御手法を適用し、有用物質生産能の向上を試みる。
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