1、本研究の概要 本研究は、法律とは異なって職場で慣習的に機能している「生ける法」について、主として長時間労働問題に軸足を置きながら考察するものである。なお、職場で成立している「生ける法」だけでなく、その規範の中で働いている労働者自身の法意識も重点的な考察対象とする。 2、本年度の成果 今年度は、先行研究の整理やアンケート調査、聞き取り調査を実施した。具体的内容は、下記の通り。 (1)若年者の権利意識に関する聞き取り調査 労働相談を受ける様々なアクターを対象に若年者の権利意識の状況について仔細な聞き取りを行った。 (2)労働法教育の成果に関するアンケート調査 労働法に関する授業を行い、その前後に実施する同一内容の調査票への回答から意識や知識の変化を調べるアンケート調査を複数の高校・大学で行った。 (3)係争事案に関する調査 NPO法人や労働組合の協力を得、長時間労働によって生じた係争についての質的調査を行った。 3、意義 仕事と生活の調和は、多くの企業で実践モデルが提示されて久しい。こうした変化を受けて、労働時間研究も豊富に行われるようになっている。しかしながら、そのような調和を実現できない・しようとしないいわゆる「ブラック企業」から、どのように長時間労働を解消するのかということは未解決の課題である。私の研究の意義は、こうした企業の協力を前提とする予定調和的な労働時間に関する研究・政策の限界を指摘し、その上でどのようなアプローチが有効になりうるのかを指摘する点にあると考えている。
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