研究課題
本研究は、スピントラッピングESR測定法を流通型電子スピン共鳴(ESR)装置に応用して、スーパーオキシドラジカル消去物質(Aox)の探索、抗酸化活性評価および抗酸化機構の解明を目的とする。まず、フローインジェクションESR(FI・ESR)法を用いてAoxの抗酸化機構解明に向けて、pH7.4の水溶液中におけるスーパーオキシドラジカル(SO)とフェノール性分子の二次反応速度定数(ks)を評価した。そして、カテコール骨格を有するコーヒー酸(CA)およびクロロゲン酸(CGA)、メトキシカテコール骨格を有するバニラ酸、フェノール骨格を有するパラクマル酸およびビタミンE誘導体のトロロックスのks値を得た。ks値はカテコール骨格を有する分子のks値に比べて、メトキシカテコールおよびフェノール骨格を有する分子はのks値は1桁から2桁以上小さかった。以上から、本法が抗酸化活性強度の絶対的指標であるks値を系統的に評価できる事を示した。次に、HPLC-ESR法を用いて混合物の総抗酸化活性および成分による寄与の評価法の確立を試みた。測定の標準試料には、上述のCAとCGAの混合試料をもちいた。得られたESRクロマトグラムにはCAとCGAの2本のピークが現れた。CAおよびCGA濃度を変えると、ピーク高さは濃度に依存して変化した。解析から得た各ピーク面積の比は、各Aoxのks値と濃度[C]の積(ks[C])の比に相関した。ここで、物理化学的には混合物の総抗酸化活性は各Aoxのks[C]の総和であり、その比率は総活性への寄与と考えられる。ゆえに今回得た結果から、HPLC-ESR法で得たESRクロマトグラムのピーク面積を抗酸化活性として置換できた。2つの流通型ESR法を組み合わせることで、混合物および成分のスーパーオキシドラジカル消去活性の定量的評価が可能なことを示した。
3: やや遅れている
HPLC-ESR法による抗酸化活性評価法の確立およびFI-ESR法によるスーパーオキシドラジカル消去物質の抗酸化機構解明では、良好な結果が得られた。現在、結果をまとめて論文誌に報告する準備を進めている。年度中に論文投稿できなかったことおよび新規スーパーオキシドラジカル消去物質の探索にむけての新規逆相HPLC-ESR装置構築に着手できなかったので、研究計画からやや遅れている。
現有の装置で、さまざまな植物抽出物のHPLC-ESR測定(水溶液1液系)を行っているが、得た信号の定量的評価法が確立していなかった。よって、2年目の年次計画「抗酸化活性評価法および成分による寄与の評価法の確立」と「FI-ESR法によるスーパーオキシドラジカル消去分子の二次反応速度定数評価」を優先して進めた。今後は、計画の1年目に示した新規スーパーオキシドラジカル消去分子の探索に向けて、高分離が可能な逆相HPLC-ESR(水一非水2液系)装置の構築を進める。新装置構築の予備実験として、メタノールを加えたリン酸緩衝液におけるスーパーオキシドラジカルの生成を確認した。計画で述べた装置を試作してESRクロマトグラムの記録を試みる。装置が構築でき次第、新規Aoxの探索を行う。そして、FI-ESR法を用いてks値を評価する。
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BIOSCIENCE BIOTECHNOLOGY AND BIOCHE MISTRY
巻: 77 ページ: 324-331
10.1271/bbb.120749