研究概要 |
本年は3次元神経-筋肉共培養組織と拮抗筋構造を含む骨格筋アクチュエータを確立した。 ①3次元神経-筋肉共培養組織 本年度は作製した神経-筋肉共培養組織の評価を行った。まず、本共培養組織中の神経には運動ニューロンの分化マーカーが発現していることを明らかにし、神経と骨格筋線維の接触部においてアセチルコリン受容体の集合が存在していることが確認された。生体の神経筋接合部ではアセチルコリン受容体の集合が存在するため, 上記結果は本神経-筋肉共培養組織にも神経筋接合部が存在することを示唆している。さらに、本神経-筋肉共培養組織にグルタミン酸を与えて神経を興奮させると収縮運動が発生するが、骨格筋線維束にグルタミン酸を与えても収縮運動は発生しないことを確認した。加えて、筋弛緩剤を与えて神経筋接合部を無力化すると、グルタミン酸を与えても収縮運動が発生しないことを確認した。上記結果より、提案の方法により神経刺激で駆動可能な骨格筋組織を確立できたと考えられる。 ②拮抗筋構造を含む骨格筋アクチュエータ 骨格筋線維束の生体外での構築は様々な研究者により試みられているが、経時的に変化する骨格筋線維の張力との継続的な釣り合いが取れず、継続して収縮性を発揮することが困難であった。そこで、生体と同様に拮抗筋構造を構築して、両筋肉の間で張力のバランスを取りながら培養することを試みた。拮抗筋構造の構築に向けて、筋芽細胞を含んだシート状のゲル構造を積層させた状態で培養する方法を考案した。提案の方法を用いてリンク機構を有する構造体上で拮抗筋構造を実現することで、継続した収縮性を発揮可能になっただけでなく、進展・収縮の2方向の運動が可能となった。以上の結果より、従来の骨格筋構築法よりも拮抗筋構造は創薬分野や工学分野への応用可能性が高く、将来的には①の結果を応用することで神経刺激による駆動も実現できると考えられる。
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