研究課題/領域番号 |
12J08954
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大川 祐樹 名古屋大学, 医学系研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | グリオーマ / ガングリオシド / マウスモデル |
研究概要 |
ヒトグリオーマ組織では正常脳組織には発現していないガングリオシド(GD3、GD2)の高発現が報告されているが、それらガングリオシドの機能解析は行われていない。本年度は、RCAS/tv-aシステムを用いたグリオーママウスモデルにおけるガングリオシド(GD3、GD2)の発現解析と、その発現による表現系変化の解析を行った。Gtv-aマウス(GFAPプロモーターによりtv-a受容体が発現するトランスジェニックマウス)にRCASを用いてPDGFB遺伝子を導入して作出したグリオーマ組織では、GD3、GD2の発現は見られなかった。しかし、p53欠損Gtv-aマウス(Gtv-aマウスをp53^<-/->マウスと交配させ、Tp53遺伝子をホモ欠損しているマウス)に、PDGFB遺伝子を導入して作出したグリオーマ組織においては、腫瘍部位特異的にGD2の発現が観察された(凍結切片を用いた免疫組織染色による)。一方、P53欠損Gtv-aマウスより作製した初代培養アストロサイトにRCASを用いてPDGFB、AKT、oncogenicなKRASやβ-catenin遺伝子を導入し、GD3、GD2の発現をflow cytometerで解析したところ、PDGFB遺伝子導入時にのみ、一部の細胞群でGD3の発現が誘導された。さらにcell sorterを用いてGD3高発現とGD3低発現の細胞集団を分取し、MTT assayにて増殖能を比較したところ、GD3高発現細胞群は低発現細胞群に比べ有意に高い増殖能を有していた。またショ糖密度勾配遠心法より回収した脂質ラフト分画をウエスタンブロッティングにて解析したところ、GD3高発現細胞群ではGD3低発現細胞群に比べ、多くのPDGF受容体が脂質ラフトに局在していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の通り、グリオーママウスモデルのグリオーマ組織において、ガングリオシド(GD3、GD2)の発現を観察している。また遺伝子改変マウスの交配も予定通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
p53欠損Gtv-aマウスにGD3合成酵素遺伝子欠損マウスを交配させ、GD3合成酵素欠損p53欠損Gtv-aマウスを作製し、PDGFB遺伝子導入におけるグリオーマ形成の時期やグリオーマの悪性度に対するGD3、GD2の関与をin vivoで明らかにする。また初代培養アストロサイトまたは初代培養グリオーマ細胞を用いて、PDGFBによるGD3発現誘導の分子メカニズムを明らかにする。
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