ヒトグリオーマ組織では正常脳組織には発現していないガングリオシドGD3とGD2の高発現が報告されているが、それらガングリオシドの機能解析は行われていない。本年度は昨年度に引き続き、RCAS/tv-aシステムを用いたグリオーマモデルマウスにおけるガングリオシドの機能解析を行った。はじめに、PDGFB遺伝子を導入したp53欠損Gtv-aマウス由来初代培養アストロサイトを用いて、GD3と相互作用する分子を網羅的に同定した。GD3を標的にEMARS法(Enzyme-mediated activation of radical sources method)と質量分析を組み合わせて行うことにより、PDGFRα(Platelet-derived growth factor receptor α)を同定した。GD3高発現細胞群はGD3低発現細胞群に比べ、PDGFRαの高発現が観察され、AktやYes kinaseのリン酸化レベルが有意に上昇していた。また免疫沈降法と蛍光免疫染色法により、GD3、PDGFRα、Yes kinase、3分子の相互作用と共局在が観察された。p53欠損Gtv-aマウス由来初代培養アストロサイトにおいてsiRNAを用いてYes kinaseをknockdownすると、paxillinのリン酸化レベルの減少に伴い、浸潤能の低下が観察された。以上の結果から、GD3は脂質ラフトにおけるPDGFRαとYes kinaseの会合を促進することにより、浸潤能を亢進することが示唆された。
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