研究概要 |
前年度進展のあった土星系の小型衛星ヘレネに関する一連の成果についての論文は、今年度掲載拒否をされた。そのため、改訂し、他誌に再投稿中である。このため、現在も査読中である。また、小型衛星ヤヌスについての研究は大きな進展を得ることができた。前年度の成果として、衛星表層において重力的な低所に、暗く平たい領域が存在することを発見していた。また、これらの分布も環粒子の挙動と衛星への衝突に密接な関係があることを理論的考察から得ていた。今年度では, これらの実証を高精度N体数値計算を通じて行った。そのために、環の粒子が衛星に衝突を起こす際の、衛星の領域ごとの衝突確率の全球分布およびフラックスについての計算を行った。環と衛星系のN体計算を行い、どのような方向から衛星に衝突をするのかを見積もった。それらの頻度分布から、衛星の各領域ごとの衝突確率の全球分布を計算することが可能になった。この際、難点として、衝突がかならずしも堆穣のみではなく、衝突速度が速い場合に侵食が生じうる。それらを加味し、堆積フラックスを見積もった。その結果、衛星表面の暗く平たい領域の分布と、堆積フラックスは極めてよく一致することを明らかにすることができた。このため、ヤヌスの堆積物の起源が環であるという肯定的な結果を得ることができた。これらの成果を学会で発表をおこなった。また、現在論文を作成中である。 今後の予定として、これまでの研究で得た知見やノウハウを生かし、土星系の中型衛星、特にエンセラダスやディオーネといった衛星の表層解析を行うことに関心を持っている。これらの天体は、土星系の衛星や環の進化そのものに直接関係している一方で、表層解析といった方面での調査はいまだ行われていなかった。新たな知見が得られるものと期待し、調査をおこなっている。
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