研究課題/領域番号 |
12J08972
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
貝和 菜穂美 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | クヌギカメムシ / 腸内共生細菌 / 産卵場所選好性 / 卵越冬 / 次世代シークエンサー |
研究概要 |
クヌギカメムシ類はカメムシ目クヌギカメムシ科の昆虫であり、日本には2属5種が生息ししている。 これまに中腸盲嚢部に種特異的な共生細菌を保持していることや、盲嚢部以外にも他のカメムシ類では見られない球状の共生器官が産卵口付近に附随していること、共生細菌が卵塊上に産みつけられるゼリー状物質を介して母から子へと垂直伝達している事等が明らかとなっていた。 ・クヌギカメムシの共生細菌伝達機構の進化を探るため、産卵生態に重点を置いた研究を進めた。クヌギカメムシの産卵は11~12月にクヌギ木樹皮上で行なわれ、孵化は2~3月に起こる。野外調査は全てつくば市の松見公園で実施した。方位と産卵数を比較した場合に北~北西面に顕著に産卵数が多く、方位先行性があると考えられた。現在は温度や湿度の違いが卵の孵化/成長/共生細菌の伝達に及ぼす影響について引き続き調査を行っている。 ・クヌギカメムシ、サジクヌギカメムシ、ヨツモンカメムシそれぞれの腸内共生細菌のゲノムサイズをPFGE法により推定した。いずれの腸内共生細菌も0.74Mb程であり、これは大腸菌等比較的近縁な自由生活性細菌の4-4.8Mbに比べるとゲノム縮小が起こっていることは明らかである。さらにこれまでに報告されているカメムシ類の腸内共生細菌の中でも最もゲノムサイズが小さいことから、宿主-細菌間で高度な共進化が起こっていることが考えられる。今後はゲノム縮小の詳細を解明するためクヌギカメムシ及びヘラクヌギカメムシの腸内共生細菌の次世代シークエンサーを用いたゲノム解読を予定している。また、ゼリー量物質生産部位を含む卵巣及び共生器官より作成したcDNAライブラリーを用いたRNAseqを実地した。 ・クヌギカメムシで100%の感染率が確認された二次共生細菌(Sodalis様共生細菌)への感染を複数のカメムシ種でも確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌と昆虫の共生機構についての生態的な意味や分子的基盤を明らかにする為の研究を進めた。 24年度は野外調査を行い宿主昆虫の生態的な側面を明らかとすると同時に、共生細菌のゲノムサイズの推定や、研究対象の特異的な生態の分子基盤に迫るべくRNAseqを実施する等、多様な手法を用いて積極的に自らの研究課題に取り組んだ。研究や実験はもちろんのこと、セミナーや国内外の学会に参加する等研究室内外の交流も積極的に行なっており、総合的には期待通り研究が進展したと評価出来る。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(-平成26年3月31日)の実験実地計画 ・クヌギ木の東西南北から採集した幼虫サンプルについて、腸内共生細菌の定量的PCRを行ない産卵される方位の違いが共生細菌の伝達効率に影響を与えるか否かの ・腸内共生細菌の全ゲノムを解読し、どのような遺伝子が保存されているのか探索し、腸内共生細菌の宿主に対する機能を推定する ・RNAseqの結果を解析し、ゼリー状物質生産部位/中腸盲嚢部/黄色器官でそれぞれ特異的に発現が見られる遺伝子群をそれぞれ選出し、定量的RT-PCRによって組織別に発現量を確認する
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