研究課題/領域番号 |
12J08975
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
古戎 道典 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | 筋強直性ジストロフィー / アンチセンスオリゴ / ドラッグ・デリバリー / マイクロバブル |
研究概要 |
今年度は、筋強直性ジストロフィーに対するアンチセンス治療法の開発のため、アンチセンスオリゴの効率的な導入法の確立を行った。また、治療法効果を定量的に測定するため、本疾患のモデルマウスの筋強直症状の測定法の確立を行った。 アンチセンスオリゴの効率的な導入法については、バブル・リボソームを用いたデリバリーシステムの検討を、東京薬科大学薬物送達学教室の根岸洋一准教授との共同研究で行った。バブル・リポソームは、超音波造影ガスを封入したリボソームであり、超音波を照射することでキャビテーションを生じ、周囲の細胞の細胞膜透過性を向上させる。本研究では、モデルマウスHSALRの前頸骨筋に、Clcn1遺伝子の選択的スプライシングをターゲットとするモルフォリノオリゴをバブル・リボソームと混合して筋肉内注射し、超音波を照射することでモルフォリノオリゴの浸透を図った。その結果、バブル・リボソームと超音波を用いた場合に、モルフォリノオリゴの効果が向上する傾向が観察された。 筋強直症状の測定法の確立については、東京大学大学院総合文化研究科の柳原大准教授との共同研究で行った。覚醒下におけるHSALRのミオトニアの測定系を確立し、従来困難であった表現型の解析が可能となった。 これらの系の構築により、分子生物学的、組織学的、および生理学的に、モルフォリノ投与がモデルマウスの症状を改善することを示すことができ、筋強直性ジストロフィーに対するモルフォリノ治療開発の実現に貢献する結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、筋強直性ジストロフィーのモデルマウスに対しアンチセンスオリゴの投与法を確立し、Clcn1遺伝子に対するアンチセンスオリゴの効果を検証する実験系を立ち上げることができたが、当初計画していたClcn1遺伝子以外の遺伝子に対するアンチセンスオリゴの設計については、十分な検討が行えていないため。
|
今後の研究の推進方策 |
筋強直性ジストロフィーは異常に伸長したCUGリピートRNAの発現によって発症し、リピートの長さと症状の重篤度には正の相関がある。本研究で使用するモデルマウスHSA^<LR>は、250回のCUGリピートRNAを発現するトランスジーンが導入されたものだが、世代を経るごとにリピートが短縮し、現在、当研究室で維持しているHSA^<LR>のリピート長は180回程度であることがわかった。アンチセンス治療の開発、および、病理メカニズムの解明において、モデルマウスが十分な表現型を示すことが必須である。まず、モデルマウスがどのような表現型を維持しているか確認した上で、治療ターゲットとすべき因子を再考したい。
|