本研究では、Cs-129を用いた「土壌からイネの玄米に到る放射性セシウムの詳細動態解明と移行抑制法の検証」を目的として、イネの生育段階別での放射性Cs吸収速度論解析と放射性Cs接触部位からのCsの移行について検討した。平成24年度においては、1)安定同位体Csを用いたイネのCs集積および吸収抑制に関する研究および2)Cs-129を用いたポジトロンイメージング解析を実施した。イネ品種は国内で生産されている代表的なジャポニカ種であるコシヒカリを用いた。 1)安定同位体Csを用いたイネのCs集積および吸収抑制に関する研究 水耕栽培したコシヒカリの安定同位体Cs経根吸収において、(1)播種後2週間の幼植物および出穂期個体へのCs処理、(2)異なるCs濃度(0~10μM)処理による根のCs吸収速度論解析および(3)カリウム添加(0~18mM)による吸収抑制効果の検討を行った。(1)から(3)の処理を行ったイネの部位別サンプル(葉身、葉鞘、基部、根)は酸分解およびCs濃度分析を行った。得られた分析結果はCs-129による動態解析における重要な基本情報になると考えられた。 2)Cs-129を用いたポジトロンイメージング解析 水耕栽培したコシヒカリ幼植物にCs-129を投与し、コシヒカリ体内のCs-129動態解析を行い、コシヒカリ根への集積が確認された。Cs-129の製造において、KIから生成されるCs-129の量が極めて少なく、また、溶液中に含まれる多量のKはコシヒカリのCs吸収を抑制する可能性が示唆された。製造したCs-129については分子認識ゲルを用いて溶液中のKと分離し、Cs-129イメージング精度の向上を検討した。Cs-129イメージングの確立により、これまで明らかとなっていなかったイネ体内の詳細なCs動態解析が可能になると考えられた。
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