研究課題/領域番号 |
12J09035
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
向田 享平 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | スカラー場 / 熱場の理論 / インフレーション |
研究概要 |
本年度は、特にスカラー場の運動に高温プラズマが及ぼす影響に焦点をあてて研究した。 スカラー場は素粒子論的宇宙論において重要な役割を担っており、特にインフレーションの後にスカラー場が平衡状態から大きく離れた値に凝縮する場合は興味深い。例えば、インフレーションをおこしたインフラトン、超重力理論やストリング理論に付随するモジュライ、超対称性模型に付随するレプトン数やバリオン数を持った平坦方向をパラメトライズしたアフレックダイン場などは、全て凝縮したスカラー場が主要な役割を担っており、このダイナミクスを理解することが必要となる。 凝縮したスカラー場は、周囲の粒子的な励起の影響を受けながら運動することになる。本年度は、スカラー場のダイナミクスが周囲の粒子の相互作用よりも遅い場合に、高温プラズマがスカラー場に与える影響について詳細に解析した。特に、プラズマから受ける効果によって、スカラー場がコヒーレントに振動を始める時期の変更、熱的な散逸が起こり、スカラー場のエネルギー密度の発展が大きく変更されることを示した。さらに、この結果をインフラトンの再加熱に応用して、再加熱温度が変更され得ることを示した。特に、非摂動的に生成された粒子が崩壊できるようなケースではプレヒーティングによって非常に高温のプラズマができ、この作られた高温のプラズマから受ける熱的な散逸によってインフラトンの凝縮が崩壊できることを示した。この効果によって、再加熱温度が劇的に変更され得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は特にスカラー場の環境中での挙動に焦点をあてて研究した。Planck衛星によって宇宙背景放射の観測が精密化されたことを踏まえると、どのようなインフレーション模型がより現実を記述するかということが今後ますます重要になると考えられる。この観点からすると、特に、インフレーションの重要なパラメータである再加熱温度の議論をより精密なものにした本年度の研究は意義深い。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き環境中でのスカラー場の振る舞いに焦点を当てて研究していく。特に、LHCで新物理が発見されていないことを鑑みれば、Planck衛星の結果をふまえ、よりミニマルな模型のインフレーションについての考察を深めることは重要だと考える。この際、本年度の研究で得た知識が非常に重要になることが予想される。
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