研究課題/領域番号 |
12J09057
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
西木 一生 宮崎大学, 農学工学総合研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | S.dysgalactiae / 血清白濁因子 / ゲノム / ワクチン / ラテックスビーズ |
研究概要 |
本研究ではゲノム情報を利用した魚類由来Group C Streptococcus dysgalactiae(GCSD)の病原性因子に関する知見の蓄積とそれらの知見をGCSD感染症に対するワクチン開発へと結びつけることを目的とした。当該年度に実施した研究として、まず魚類由来GCSDの病原性候補遺伝子をゲノムDNA中から発掘し、それらの遺伝子の全塩基配列をインバースPCR等により決定した。続いて、弱毒株と強毒株に対して、決定した病原候補遺伝子についてQ-PCRによる発現解析を行った。その結果、血清白濁因子(SOF)をコードする遺伝子の発現量について、強毒株が弱毒株に比べて極めて高いことを明らかにした。SOFはヒトの病原細菌であるS.pyogenesやブタの病原細菌であるS.suisにおいても重要な病原因子であると報告されている。GCSDのSOFが魚類に対する病原性に貢献しているかを調べるため、sof遺伝子破壊株の作製を試みた。結果、S.suisで開発されたノックアウトベクターpSET4Sを用いることで破壊株の作製に成功した。現在、遺伝子破壊株と野生株を使用した感染試験による病原性検査を準備中である。 ゲノム情報から得た病原候補因子の一つとして、GCSD表層免疫原性タンパク(Sd-Sip)を見出した。GCSDに感染したカンパチ血清を用いた免疫染色の結果、Sd-Sipはカンパチに対して強い免疫原性があることを明らかにした。続いて、Sd-Sipの組み換えタンパクを作製しELISA抗原としての利用を試みた。その結果、組み換えSd-Sipに対するカンパチ血清の抗体価測定が可能であることを明らかにした。また、組み換えSd-Sipをラテックスビーズに吸着させ、GCSD感染魚血清と反応させたところ、顕著な凝集が確認された。この抗原吸着ラテックスビーズを用いた凝集反応による血清診断方法は、現場レベルで適用可能な迅速で簡便な方法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム情報を利用したGCSDの病原候補遺伝子のスクリーニングおよび遺伝子の転写解析については研究計画通りに完了した。また、複数の病原候補遺伝子について遺伝子破壊株の作製が既に完成している。病原候補因子の組み換えタンパクの作製も行っており、作製した組み換えタンパクを利用したGCSD感染症の簡易診断方法を開発することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
GCSDの感染試験には人工種苗のカンパチを用いることでより正確なデータを得ることができるが、実験感染に適したサイズの魚はいつでも入手出来る訳ではない。従って、今後行う予定である感染試験およびワクチン試験に用いる遺伝子破壊株およびリコンビナントワクチン抗原について、供試魚が入手できるまでにまだ作製していない遺伝子破壊株および組み換えタンパクの作出を行う。供試魚が入手出来次第、遺伝子破壊株を用いた感染試験を行い破壊株の病原性の変化を精査する。また、作製した組み換えタンパクをワクチン液として魚類に接種し、その効果を検討する。
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