研究課題/領域番号 |
12J09069
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
大山 智子 (五輪 智子) 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 特別研究員(PD)
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キーワード | 量子ビーム / 微細加工 / 天然由来高分子 / レジスト |
研究概要 |
平成24年度は「(1)量子ビームを用いた生分解性高分子の微細加工技術の開発」「(2)加工に必要な照射線量の予測法の確立」の2つを中心に研究を行った。 (1)ポリ乳酸は生分解性・生体適合性を併せ持つことから、微細加工技術が確立されれば、医薬研究におけるバイオチップや体内埋め込み型マイクロマシン等の産業応用が期待される。本研究では、集束イオンビームを用いたダイレクトエッチングや電子線リソグラフィなどによる微細加工を試みた。ポリ乳酸はガラス転移温度(55℃)以上で形状保持性が急激に失われるため、高線量・高電流値の照射では熱の影響による加工ムラや形状の崩れが見られた。そのため、線量・線量率・サンプルの厚み等の最適化によって熱の影響を抑制し、さらには放射線架橋による耐熱性の向上なども検討することによって、制御された任意の微細加工に成功した。 (2)各種量子ビームにおける様々な高分子材料の感度(加工に必要な照射量)を調査し、放射線化学の観点から吸収線量に換算した。その結果、照射により生じた二次電子による放射線化学反応がほぼ等しいと仮定できるEUV・軟X線・低エネルギー電子線で、波長やエネルギーよらずほぼ一定の必要吸収線量を示すことが分かった。つまり、ある線源での感度と吸収係数・線エネルギー付与の情報があれば、特定の線源での必要照射量と、高感度化のために添加すべき元素を理論的に予測できることになる。露光源の開発を待たず、既存の露光源を用いて他波長に対する感度が予測できるため、次世代EUV露光に向けた高感度レジスト材料の開発を加速させるデータとして大きな注目を集めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
量子ビームの制御と材料そのものの改質の両面から微細加工技術の開発を行い、天然由来高分子材料のサブミクロン加工に成功した。機能性デバイスの創製という本研究の最終目的につながる成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
天然由来高分子材料の微細加工体については今後、医用デバイスへの応用も見据え、加工体の安全性や細胞の接着性といった観点から照射による試料表面の化学状態変化等についても評価していきたいと考えている。また、高分子の感度予測法を用い、材料の特性や求められる加工体の形状などに応じて各種量子ビームを使い分けた加工技術の開発を行っていきたい。
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