研究課題/領域番号 |
12J09078
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
三室 碧人 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
キーワード | メガリージョンアジア / 地域間交通 / 循環メカニズム / タイ / 都市化 |
研究概要 |
今年度は、以下三点の研究を進捗した。具体的には、1)政策的背景の整理(現地視察の実施、2)地域間交通・経済モデルの開発、3)ケーススタディとしてアジアの空間構造変化と地域間交通からのCO2排出量変化の定量分析、の三点である。 1)では、低炭素化と高利便性を実現する施策の整理(分析モデルへのインプット)を、AVOID,SHIFT,IMPROVEの三つの観点から行い、より施策効果のねらいが明確になるよう心掛けた。これは、研究計画には記載していなかったが、タイ・ラオスへの現地調査での専門家からのアドバイスを受けて自主的に行った研究である。意義は、政策担当者に対して施策と分析結果の因果関係の理解を促す上で大変有用となる点である。 2)では、研究計画通りに、「交通整備と経済活動の相互作用の定式化」に努めた。まずは評価手法全体のフレームワークを構築した。さらにアジアにおける地域間交通の研究では、交通インフラ整備によって都市と都市が繋がることで、人口が大都市へ移動する現象(ストロー効果)の定式化が重要課題である。本研究では、このメカニズムをモデルに組み込むことで、「低炭素化(環境)」と「高利便性(経済)」の両立を実現するインフラ整備方法(交通)のあり方をより具体的に検討することが可能となった。 3)では、ケーススタディとして上記の分析モデルをメガリージョンアジアの大都市集積が顕著であるタイを事例とし、低炭素化と高利便性を実現する施策組み合わせのシナリオ比較分析を実施した。ここでは、三つのケースシナリオ(一極集中型、周辺集中型、多極集中型)を設定し、低炭素化と高利便性の両立には、過度な集中・分散を回避することが有効であることが定量的に示された。 上記の研究過程では、タイ・ラオスの現地調査、各種セミナー・シンポジウムへも積極的に参加し、現地情報、及び最新の知見・動向を踏まえた研究進捗をするように努めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、研究目的であるメガリージョンアジアにおける「低炭素化」と「高利便性」を実現する交通政策評価手法の開発において、評価手法全体のフレームワーク構築、定量モデルの定式化を行い、このモデルを用いてケーススタディ分析まで実施することができた。これは、研究計画以上の進展である。ケーススタディ結果も学会発表を行った。さらに、本研究の特徴である循環メカニズムを考慮した交通モデルに関する研究では、査読論文として採択された。今年度の成果は、最終年度の研究進捗を確実に実行するための基礎として達成できたと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、今年度作成した分析モデルのアジア全体への適用を重点的に実施する。 分析の過程において特に工夫する点は、アジアを北東アジアと東南アジアの二つに分けて考える点である。理由は、中国の国土面積・人口が他のアジア諸国に比較して大きいこと、東南アジアは経済共同体(2015年ごろ)の構築が見込まれることから、二つの特性をより詳細に反映できるスケールへの分解を考えるためである。このような工夫をすることで、「低炭素化」と「高利便性」を両立するための交通施策の整理が、より現実の地域間取引の繋がりを反映した施策へ近づくことが可能となると考える。また、現実の地域間交通の状況を把握するために、現地の交通事情に詳しい専門家・研究者との連携をすることで、実態に基づく施策列挙、及びモデル開発の修正を常に加えるよう努めることとする。
|