前年度は、マグネター1E 2259+586と超新星残骸CTB109の年齢齟齬の問題に取り組んだ。この年齢齟齬がマグネター1E 2259+586の磁場が徐々に減衰してきたことで、自転周期とその伸展率から計算される特性年齢が見かけ上大きく見積もられるためだと結論した。 今年度は、マグネター1E 2259+586がどのような恒星の超新星爆発から作られたかという、本研究のより根本的な問題について取り組んだ。これまでの結果を一度見直し「すざく」によるCTB109の観測データをより詳細に調べた。その結果、CTB109は温度がおよそ0.25keVと68keVの低温プラズマと高温プラズマから成るというこれまでの結果を追認した。これに加え、低温成分がシェル構造を成し、その内側に高温成分が閉じ込められていることが分かった。このことから低温成分が爆発によって掃き集められた周辺の星間物質で、高温成分が親星由来の噴出物であることがより確かとなった。X線スペクトルの強度からプラズマの平均密度、イメージから体積を見積もり、プラズマの総質量を求めると、星間物質からなる低温成分はおよそ140太陽質量、親星から噴出物からなる高温成分は40太陽質量になることが分かった。この結果からマグネター1E 2259+586はひじょうに大質量の恒星の超新星爆発によって作られたことが明らかとなった。噴出物(高温成分)に比べて掃き集められた周辺物質(低温成分)の質量が十分に大きく、放射によるエネルギー損失も小さいことから、CTB109は断熱膨張期にあると考えられる。CTB109を作るプラズマの温度と総質量から、もととなった超新星爆発のエネルギーは~ 1E+51 erg ほど見積もられ、重力崩壊型としては典型的な爆発規模であったことが分かった。
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