本研究の目的は、タクラマカン砂漠で発生するダストが氷雲の形成・微物理・光学特性に与える影響を定量的に明らかにすることである。平成25年度で実施した研究の成果を以下に示す。 本研究では、ダストと氷雲の微物理・光学特性を調べるために衛星搭載能動型センサー(ライダー・雲レーダー)を用いた。ライダーによってダストの氷晶核に関する研究を行うためには、ライダーデータから雲とダストを正確に検出・分類しなければならい。しかし、解析を進めていくにつれて、ダストを雲と誤分類しているケースが多々見られた。そのため、まずは雲-ダスト分類法の確立が必要となった。 ライダーデータから雲を検出する際、ある信号強度の閾値を超えた信号を雲としている。濃いダストが存在する領域では、後方散乱信号が強いために雲と誤判別されてしまう。そこで、本研究では雲マスクで検出された雲データについて、判別分析による雲と誤判別雲の2群判別を行った。 判別分析の判別モデルを構築するため、ライダーデータから雲と誤判別雲の学習データを決定した。このとき、学習データの誤分類を最小限にするため、ライダー以外に雲レーダーとMODISの雲マスク、相対湿度のデータを用いて雲と誤判別雲が決定された。 得られた判別モデルを用いてライダーの雲データを再分類した結果、91.7%の検出精度で誤判別雲を識別することができた。タクラマカン砂漠においては、ダストが存在する信号のうち、34.6%が雲と誤判別されていた。雲とダストの再分類後は、再分類前と比べてダストの消散係数の値が最大約2.6倍大きかった。本研究の判別手法によって、ダストと氷雲の光学特性・微物理特性の推定誤差が減少すると期待される。
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