研究課題/領域番号 |
12J09115
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
永久 雄一 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | トランジスタ / 論理素子 / グラフェン / SiC / オン/オフ比 / 単極性動作 |
研究概要 |
本研究の目的は、炭素原子層数層からなるグラフェンをチャネルに用いたトランジスタを作製し、その特性を論理素子応用に向けて向上させることである。グラフェンは優れたキャリア輸送特性を有するため、Siに代わるトランジスタのチャネル材料としての期待が高い。しかし、グラフェンのバンドギャップがゼロであるため、トランジスタのチャネルに用いるとドレイン電流のオン/オフ比が低くなり、これが論理素子応用に向けての大きな課題である。本研究においては、まずオン/オフ比に注目し、グラフェンチャネルに不純物ドープした半導体のソース/ドレインを用いることで、オン/オフ比向上を目指した。アプローチとして、平成24年度の研究活動ではSiC基板を高温真空下でアニールすることにより基板表面に形成される「エピタキシャルグラフェン」をチャネルに、n型ドープしたSiC(n-SiC)をソース/ドレインとしたトップゲート型のトランジスタを作製し、高いオン/オフ比の実現を目指した。 平成24年度は、まずエピタキシャルグラフェンの高品質化に注力した。初めに、高温真空アニールにより4H-SiC(0001)面基板表面上に再現性良く0~2原子層のグラフェン層を形成することに成功した。また、グラフェン層を形成後、水素アニール処理により、グラフェン/SiC界面に存在するバッファ層をグラフェンへと改質することにも成功し、結果、SiC上に界面にバッファ層の無い1~3原子層のグラフェン層を再現性良く形成することを可能にした。これらの検討により得た、バッファ層の無い1~3原子層グラフェンをチャネルに、n-SiC領域をソース/ドレインとしたトップゲート型のトランジスタを作製したところ、10^3以上のオン/オフ比と明瞭な単極性動作が観察された。特にこのオン/オフ比の値はグラフェントランジスタとしては世界最高レベルの値であり、本年度の研究成果により、グラフェントランジスタの論理素子応用に向けて、重要な手がかりを得たといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
n-SiC領域をソース/ドレインとしたグラフェンチャネルトランジスタにより、103以上のドレイン電流のオン/オフ比と、トランジスタの単極性動作を実現した。この結果は世界的にも最高レベルのものであり、本研究における当初の目的をおおむね達成できたと言える。また、今後更なる特性向上も期待でき、当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、本研究で作製されるトランジスタにおける動作メカニズムに関するより詳細な分析を行う。具体的にはグラフェン層数とデバイス特性の関係、グラフェン/n-SiCコンタクトにおける電流機構の分析等。これにより、デバイス特性改善の指針を得ることを目指す。次の段階として、電子線描画装置等を用いて、チャネルにナノリボン加工によりバンドギャップを誘起したグラフェンを用いた場合における検討を行う。最終的に得られた知見により、次世代論理素子としてコンペティティブな特性を有するグラフェントランジスタの実現を目指す。
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