研究課題
島根県東部の深部低周波地震について、一般的な波形インバージョンを用いて、基本的な震源物理プロセスである発震機構の推定を行った。特に、観測点補正や安定性解析など、結果の信頼性の確認に重点をあて、インバージョン手法の改良を行い、実際のデータに適用した。その結果、これらの深部低周波地震のメカニズムは、通常の地震のような滑り運動ではないことが分かった。深部低周波地震に特化したインバージョン手法の開発については、従来のインバージョンよりもS/Nの低いイベントに対しても安定して解を求めることが出来るアルゴリズムが構想段階であり、活火山地域を含む他地域の深部低周波地震のメカニズム解明を目指す上で、今後の課題である。日本全国の深部低周波地震の包括的活動解析については、現在進行中であり、本年度に購入した計算機サーバーを用いて、計算する準備が整えているところである。当初は二年次に計画していたVolcanicLFEの物理モデル構築について、ある程度の進捗を本年度に得ることが出来た。カリフォルニア工科大学を訪問し、数理モデリングの第一人者であるVictor C.Tsai博士と議論を重ねることで、マグマが冷却する過程での応力蓄積について定量的な議論が可能であることを見いだした。具体的な設定や検証は次年度以降の課題である。研究成果の発表は、当初の予定よりも多く行ってきた。主要学会では、日本地球惑星科学連合・日本地震学会・American Geophysical Unionに加え、Asia Oceania Geosciences Societyでも発表を行った。学術誌での論文発表も計画通り、主著として1本出版することができた。
2: おおむね順調に進展している
活動解析を日本全国の低周波地震に適用するテーマは予定より多少遅れている一方で、次年度以降に行う予定だったモデル研究を前倒しして進めることができたため。
モデル研究について詳細な検証を行うと同時に、日本全国の低周波地震の活動解析を進め、深部低周波地震の包括的理解へ取り組む。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (10件)
科学技術コミュニケーション
巻: 11 ページ: 83-93
Tectonophys
10.1016/j.tecto.2012.12.015