研究概要 |
申請者は25年度、Maximum Rank Correlation法による推定を開発するとともに、準実験法を応用することで関数形に関する仮定を緩めたうえでの実証分析を行い一定の成果を得た。 Maximum Rank Correlation法による推定に関しては、Sieve法を用いた場合、シミュレーション分析の結果は良好であったが、理論上解決すべき点が多数発見されたことからKernel法に変更した。具体的にはLocal Maximum Rank Correlation法による推定を行った後に推定された可変係数の平均をとることによる推定方法を考察した。この場合の推定量の漸近的振る舞いを研究し、可変係数としない係数についての一致性と漸近正規性を得ており、可変係数か否かを検定する方法を開発中である。 当初の計画には無かったが、関数形に関する仮定を緩めた実証研究として、南海トラフ巨大地震に関する被害想定が変更となったことを利用し、希少な激甚災害に関する情報の更新が地価に与える影響を分析した。データは公示地価と標高、各地域を過去に襲った津波の高さなどのGISデータを用い、関数形を特定しないノンパラ目トリックな差の差法で行われた。実際情報の更新が地価に与える影響は存在しこの事実は、一般的な期待効用理論の限界を指摘しているChanel and Chichilnisky (2009)の主張を支持するものであり、The economics of global environment-Catastrophic risks in theory and policyの章として採択された。特に本研究は、実験室実験でなく実社会のデータを用いてこのことを示した点で画期的である。現在は差の差法とマッチング法を合わせることでより厳密な分析を行っている。 参考文献 Chanel, O., & Chichilnisky, G., 2009, journal of Risk and Uncertainty, 39, 271-298.
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