研究課題/領域番号 |
12J09154
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
若宮 翔子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 特別研究員(DC2)
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キーワード | ソーシャルメディア / 群衆行動モニタリング / 集合経験知 / 都市分析 |
研究概要 |
平成24年度は、Twitterをはじめとするソーシャルメディアに反映されている実世界をクラウド(群衆)の経験を中心として分析し、人々のライフスタイルや実空間における関係性や,現象やイベントを理解したり評価したりするための基盤技術を構築するために、[1]ソーシャルメディアコンテンツを用いたユーザモデリング方式と[2]クラウドの経験に基づく社会的パターン発見方式とその応用について研究を行った。具体的には、[1]に関して、Twitterから取得したコンテンツを用いて実世界における人々の経験を抽出するためのシステムを開発した。特に、ソーシャルセンサモデルを作成し、クラウドの経験特徴を社会性(Social network)・人口統計(Demographics)・活動(Activity)・雰囲気(Mood)・話題(Topic)の5つの観点でモデリングする手法を提案した。ここでは,ユーザ参加型メディアに投稿されている大量のライフログコンテンツから取得可能なクラウドの経験特徴について整理し,モデル化した点に意義があると考えている。[2]では、ある地理的領域内に設定した地域の世態(Social Condition)を[1]のソーシャルセンサモデルに基づきそれぞれ抽出し、潜在的な特徴パターンを分析して地域をクラスタリングすることで、クラウドの経験に基づく地域特徴を抽出する手法を提案した。この研究成果については、査読付き国内論文誌1件、査読付き国際ワークショップ1件にて発表を行った。さらに、クラウドの経験の一つである活動(Activity)に含まれるクラウドの移動に着目し、地域間の関係性を分析する手法について検討した。具体的には、地域間のクラウドの移動を移動距離、移動時間、移動量の観点でモニタリングし、これらを統合して地域間の近接性を測定した。この研究成果については、査読付き国内論文誌1件、査読付き国際会議およびワークショップ計2件にて発表を行った。また、査読付き国際会議ではBest Paper Awardを受賞し、査読付き国際ワークショップではBest Student Paper Awardを受賞した。ソーシャルメディアからのクラウドの経験特徴を活用することにより、従来調査だけでは困難である実空間における地域特徴や地域間の関係性を動的に把握可能になったという点で重要性が高い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、クラウドの経験を中心とした実空間における地域特徴の抽出や地域間の近接関係の測定をするために、ソーシャルメディアの中でもクラウドのライフログが大量に投稿されているTwitterのデータを用いて人々の振る舞いをモニタリングし、クラウドの経験を抽出するというトップダウン的なアプローチをとって研究を進めることができた。これは当初の研究計画に沿っているといえ、おおむね順調に研究は進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
Twitterだけではなく、Foursquareのような他のソーシャルメディアコンテンツからどのようなクラウドの経験を抽出することができるかについて分析する。Foursquareからのデータを利用するためには、同サイトに登録されている施設のデータを取得する必要があり、現在収集中である。そして、抽出したクラウドの経験を中心とした実世界分析のための基盤を提案し、アプリケーションの開発を進める予定である。具体的には、グラフモデルをベースとして、ノードを地域、エッジを地域間の関係として表現される都市グラフを動的に生成するためのアルゴリズムについて検討する。特に、アプリケーションのタイプとして、都市計画などのパブリックな使用を目的するものと、住居探しなどのプライベートな使用を目的とするものがあるため、それぞれの目的に応じた都市グラフの生成、すなわち、目的に適した粒度でノードを設定するためのアルゴリズムや、関係の抽出手法について検討を行う。また、本研究は評価が非常に難しいため、評価の枠組みをどうするかが今後の重要な課題となっている。
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