研究課題/領域番号 |
12J09156
|
研究機関 | 北九州市立大学 |
研究代表者 |
古賀 晴香 公立大学法人北九州市立大学, 大学院国際環境工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
キーワード | 細胞パターニング / カーボンナノチューブ / アガロースゲル / 近赤外線 / 細胞遊走 / 3次元細胞組織体 / 金ナノロッド |
研究概要 |
昨年度の研究において確立した「カーボンナノチューブ(CNT)複合アガロースゲル」と「光照射技術」を組み合せた細胞パターニング技術を発展させた応用技術を確立した。この技術の最大の利点は、従来の細胞パターニング技術では実現することができない、任意かつ段階的な細胞パターニングを実現できることであり、この特徴を活かして「精密パターニング共培養技術」、「細胞遊走アッセイ技術」、「マイクロ組織体形成技術」へと展開した。「精密パターニング共培養技術」では、ラット肝細胞とNIH-3T3細胞の段階的な精密パターニング共培養に成功し、肝細胞のみのパターニング培養よりもパターニング共培養の方が、高い肝特異機能発現を達成できることを明らかにした。さらに、パターニング共培養では肝細胞間のギャップ結合が発達していることを見出し、肝細胞間コミュニケーションの形成促進が高機能発現につながっている可能性を示した。「細胞遊走アッセイ技術」では、パターニング培養しているガン細胞近傍から新たな細胞の伸展領域を設け、細胞遊走を評価できる手法を確立した。モデル薬剤を用いて評価を行った結果、薬剤特性に応じて細胞の遊走が促進あるいは阻害されることを実験的に検証し、本技術が細胞遊走評価ツールとして利用できる可能性を示した。「マイクロ組織体形成技術」では、厚みのあるCNT複合アガロースゲルを利用し、光照射することによって、ゲル上に微細スキャフォルドを形成させる技術を確立した。この基板上でHepG2肝細胞を培養するとスキャフォルド形状に応じた三次元細胞組織体を形成することを見出し、本技術がマクロ組織体形成法として展開できることを示した。さらに、光応答性ゲルとして、金ナノロッドの利用を発想し、「金ナノロッド複合アガロースゲル」も、CNT複合アガロースゲルと同様に細胞パターニング技術に応用できることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CNT複合アガロースゲルを用いてラット初代肝細胞とNIH-3T3細胞の精密共培養を行うことで、肝特異機能が大幅に上昇することを見出した。この実施項目は当初の計画通りであり、本研究目的の第2段階をクリアした。さらに、細胞パターニング技術だけでなく、細胞遊走、組織体形成などの他の細胞培養アプリケーションとしての可能性も見出すことが出来た。
|
今後の研究の推進方策 |
本技術を利用して、肝細胞とNIH-3T3細胞の2種類の精密パターニング共培養に成功したことから、パターニング条件の最適化、3種類の細胞を利用した精密共培養、さらには幹細胞を利用したパターニング培養へと展開する。また、細胞アッセイ技術、マクロ組織体形成技術、金ナノロッド複合アガロースゲルの細胞パターニング技術において、さらなるデータの収集と最適化を行い、汎用的な手法として発展できるように技術の改良を試みる。
|