研究課題/領域番号 |
12J09182
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
中村 充利 東京理科大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 左右非対称性 / ショウジョウバエ |
研究概要 |
本研究では、ショウジョウバエ胚消化管の前方部の左右非対称性形成において機能するnarigoma突然変異体の責任遺伝子の同定とその機能解析を目的としている。欠失突然変異系統による相補性試験とmail recombination法によって、narigoma突然変異体の責任遺伝子がdally-like(dlp)であることが明らかとなった。dlpは、ヘパラン硫酸プロテオグリカンのグリピカンである。グリピカンは、様々なシグナル伝達経路において、リガンドのモルフォゲンに必要であることが報告されている。dlp突然変異体において、JNK、Wntシグナルを抗体とレポーター遺伝子の発現を観察したところ、顕著な異常はみられなかった。ショウジョウバエには、dallyとdlpの2つグリピカンが存在することが知られている。しかしながら、dally突然変異体において、胚消化管の左右非対称性の異常はみられなかった。次に、dlpの発現を抗Dlp抗体によって調べたところ、胚消化管の内蔵筋細胞と上皮細胞において発現が観察された。 ショウジョウバエ胚消化管の前方部の左右非対称性形成には、内蔵筋が重要であることが示唆されている。このことから、内蔵筋細胞の動態を可視化することが、胚消化管の前方部における左右非対称性形成の機構を理解する上で重要であると考えられる。内蔵筋細胞の動態を可視化するために、UAS-GAL4システムを用いたライブイメージングを行った。まず、様々な種類があるUAS系統とGAL4系統の中から、内蔵筋のライブイメージングが可能な組み合わせを選び出した。その結果、これまでで最も高いレゾリューションで内蔵筋細胞のライブイメージングに成功した。また、内蔵筋における筋収縮に左右差があるかどうかを調べるために、胚消化管においてカルシウムイメージングを行った。その結果、胚消化管の内蔵筋において左右非対称なカルシウムの流入が観察された。これらの結果は、左右極性の形成に新規な機構を提唱できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目に予定していた計画をほぼすべて終え、2年目に予定していた計画に関して研究を進めることができた。それによって、ショウジョウバエ胚の内臓筋において筋収縮が左右非対称性である可能性を示唆できた。これらの結果が、当初の研究計画よりも大きく進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、野生型とdlp突然変異体において、内臓筋の細胞挙動を調べていく予定である。また、筋収縮についても同様に野生型とdlp突然変異体を比べていく予定である。これらのライブイメージングの結果から、ショウジョウバエ胚消化管の前方部の左右非対称性形成の機構の理解を深めていく予定である。また、dlpが胚消化管の前方部の左右非対称性形成において関与するシグナル経路についても調べる予定である。
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