研究課題/領域番号 |
12J09200
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
松田 達也 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 津波 / 遠心模型実験 / 粒子法 / 支持力破壊 / 浸透破壊 / 洗掘 / 掃流力 / 衝撃力 |
研究概要 |
(1)遠心模型実験による混成堤の津波被災要因の解明と水路実験による流体-地盤の相互作用を考慮した新たな洗掘現象の検討 ドラム型遠心力載荷装置による遠心模型実験を行った結果、津波の作用により防波堤が運動し、同時に捨石マウンドや支持地盤にせん断変形が生じた。また、捨石マウンドおよび海底地盤に透水力が発生し浸透破壊や噴出の現象が発生した。特に、防波堤背後の捨石マウンドおよび支持地盤は、津波による強度低下の影響を受けやすく、不安定化を及ぼす要因となることを示した。また、防波堤の大規模崩壊の一要因となる地盤洗掘について、地盤内部の応力変化に着目した洗掘メカニズムの解明を行った結果、水理学的な掃流力による洗掘だけでなく、水流によるせん断、衝撃力により地盤内の過剰間隙水圧が発生し、地盤強度を低下させることで、洗掘を助長することを明らかとした。 (2)支持地盤の破壊プロセスと考慮した津波-構造物-支持地盤連成解析手法の開発 粒子法のひとつであるSPH法を用いて、津波・海岸構造物・海底地盤の相互作用に着目し、津波が支持地盤、捨石に与える影響を遠心模型実験と比較しながら考察するとともに、大変形問題が適用可能な解析手法の開発を行った。津波浸透による支持地盤の強度低下に加え、越流水塊により支持地盤の状態変化を考慮して安定性を検討した結果、越流により地盤内に過剰間隙水圧が発生し、防波堤直下から捨石マウンド法先に至る地盤表層付近で液状化に似た状態となることがわかった。さらに、越流水塊が作用する際や地盤内の透水力に伴う地盤の強度が低下し、支持力破壊に対する危険性が一層高くなることを明らかにした。現在は、地盤の大変形と破壊後の剥離・接触問題へと適応可能な解析手法の開発を試み、弾性モデル、弾塑性モデルを導入し、理論値との比較によりその有用性の検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遠心模型実験および東日本大震災による被災事例より、地盤内の応力変化に着目した津波作用時に地盤変状メカニズム解明に重点を置き、実験・数値シミュレーションによりその現象の解明を試みた。
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今後の研究の推進方策 |
防波堤を対象とした地盤応力の変化に着目した支持力破壊や洗掘・浸透破壊による津波被災メカニズム現象を踏まえて、今後はさらに以下の点を踏まえて検討を進める。 (1)三次元効果を考慮した被災メカニズムの解明 現解析手法を実験により得られた地盤の状態変化(間隙水圧,密度)現象による地盤不安定化を考慮した三次元流体-構造物-地盤連成数値解析手法へと拡張し、三次元効果を考慮して被災メカニズムをさらに解明する。 (2)現行の設計を援用した防波堤の耐津波化検討とねばり強い構造形式および対策工の提案 防波堤における現行の設計法について、捨石マウンドや支持地盤の変形破壊を考慮した上での安定性評価法を提案する。また、既存の構造物に対し、一気に大破しないねばり強い対策方法を提示する。
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