研究課題/領域番号 |
12J09215
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
新屋 良治 中部大学, 応用生物学部, 特別研究員(SPD)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マツノザイセンチュウ / ゲノム / 遺伝学 |
研究実績の概要 |
前年度に開始したBursaphelenchus属線虫における比較ゲノム解析を今年度も継続して行った。前年度中に各線虫ゲノムDNAのshort readsの取得は終了していたが、今年度はまず始めに3kb Jumping libraryの作製およびシーケンス解析を行った。次に線虫mix stageおよびdauer stageからRNAを取得しRNA-seq解析を行った。現在までにこれら全ての取得配列を使って各線虫のゲノムアセンブリが終了している。現在はこれらのアノテーション作業を行っており、次年度中頃までには解析を終了する予定である。その後はこれらのゲノム配列情報を使ってマツノザイセンチュウが如何にして病原因子を獲得してきたのかを考察する予定である。また、本年度は雌雄同体の生殖様式を有するマツノザイセンチュウの近縁種であるオキナワザイセンチュウ(Bursaphelenchus okinawaensis)において遺伝学解析基盤の整備を行なった。この中で変異誘発剤EMSを使用した変異体分離手法の確立をし、形態および行動異常を示す多数の変異体の分離に成功した。この研究に関する論文を現在作成中である。また本年度終わりには雌雄同体のオキナワザイセンチュウを使って遺伝子組換え体作出手法の開発に取り組み始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に突然変異処理によるマツノザイセンチュウ変異体の分離に取り組んだ。目的の遺伝子に変異を導入することには成功したものの、雌雄異体の性質などによりその後の劣性ホモ変異体の分離が当初の想定以上に困難であった。そのために2年目に遺伝子の機能解析にはいることができなかった点では当初の計画より少し遅れているといえる。しかしながら、雌雄同体の近縁種であるオキナワザイセンチュウを利用して変異体の分離が容易にできるようになったことは非常に大きな前進といえる。この線虫を利用することにより、マツノザイセンチュウにおける様々な遺伝子の機能を詳細に調べることが今後可能になる。また、新たに開発されたCRISPR/Cas9法がマツノザイセンチュウにおけるノックアウト株作成手法として非常に有望であることから、当初の計画の突然変異を利用した変異体の分離手法の確立から標的遺伝子破壊手法に研究の方向性を変更することにした。将来的にはこの手法の確立により、当初の計画よりもさらによい成果が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
2013年にCRISPR/Cas9システムによる標的遺伝子破壊法が開発され、あらゆる生物における遺伝子ノックアウトがより容易に行えるようになってきた。モデル生物の1種である線虫Caenorhabditis elegansにおいてCRISPR/Cas9システムもすでに複数報告されており、私が現在主に研究を行っている研究室もC. elegansにおいて最初にCRISPR/Cas9システムを利用した遺伝子ノックアウトを成功させた研究室の1つである。本手法ではこれまで私が利用してきたランダム変異法と異なり、蛍光マーカーを組み込むことができるために劣性ホモ変異体の分離が圧倒的に容易になると考えられる。現在すでにマツノザイセンチュウにおけるCRISPR/Cas9システムにむけたプラスミド作製や条件検討を行っており、今後はこの方法を使って変異体作製手法を確立し、当初の目的であるマツノザイセンチュウ病原候補因子破壊株の作製を行っていく。
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