研究概要 |
【目的】本研究は食事時刻の違いが、概日リズムの位相さらには血液生化学指標に及ぼす影響を検討した。【研究計画】朝食欠食習慣を持つ健康な男性14名(21.4±0.5歳)とし、食事時刻を前進させる前進群(8:00,13:00,18:00;n=8)とそのままの生活を維持させる非前進群(13:00,18:00,23:00;n=6)による並行比較試験を行った。介入期間は2週間とし、1日3回の規定食を提供した。なお、介入中は規定食以外の飲食を禁止し、運動、昼寝の制限を指示した。さらに睡眠覚醒リズムは起床6:00、就寝24:00を維持させた。評価指標は早朝空腹時のグルコース、インスリンおよび遊離脂肪酸等の血液生化学指標に加え、24時間にわたる心拍変動から算出した心臓自律神経活動とした。解析ではダブルコサイナー法を用い、心拍変動指標における概日リズムの位相を評価した。統計解析では、介入前後の変化量を、前進群と非前進群との間で比較した。【結果】中性脂肪、総コレステロールおよびLDHコレステロールの介入前後の変化では、前進群が非前進群に比べて有意に低下した(p<0.05)。一方、心拍変動指標の位相は、前進群が非前進群に比べて0.9-3.2時間ほど低下し(p<0.05)、概日リズムの位相が前進した。それゆえ、食事摂取のタイミングを変化させることは、概日リズムの位相変化、さらには血中脂質の改善につながる可能性が明らかになった。【意義・重要性】近年、給餌制限が時計遺伝子や自発運動の位相に影響を及ぼすことが報告されている。しかしながら、人を対象とした調査・実験において、食事摂取のタイミングと生体リズムとの関連を検討した報告は十分でない。それゆえ、本研究で得られた知見は、朝食摂取による一次予防策を提案する際に、貴重な基礎資料となることが期待される。
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