研究課題/領域番号 |
12J09233
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金子 哲 東京工業大学, 大学院・理工学研究科(理学系), 特別研究員(DC1)
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キーワード | 単分子接合 / 電気伝導度 / 分光法 / 窒素 / ノイズ / 国際情報交換 / オランダ,中国,イタリア |
研究概要 |
本研究の目的は単分子接合に特有な物性の探索と単分子接合の電子物性を観測するための測定手法の開発である。今年度は新規物性探索の観点で窒素原子を含むπ共役系に着目し、単分子接合の作製及び電子物性の評価を行った。まず単純な二原子分子である窒素分子に着目した。電気伝導度、非弾性トンネル分光、理論計算の三つの異なる視点から研究する事により、窒素分子が1G_0(G_0=2e^2/h)という金単原子接合と同等の電気伝導度を持つ事が明らかとなった。窒素分子は孤立分子状態では不活性である事が知られているが、本研究により単分子接合状態では白金と強く相互作用し、金属と同程度の電気伝導度を示す事が明らかとなった。次にπ共役系内に組み込まれた窒素分子を持つピラジン分子に着目した。窒素分子と同様に電気伝導度、非弾性トンネル分光、理論計算の観点で研究を行った結果、ピラジンは白金電極間で異なる電気伝導度を持つ二つの準安定構造が存在する事が明らかとなった。更に二つの電気伝導度状態は電極間距離を調節する事で制御できる事が示唆された。以上二つの分子接合系においてバルクサイズの金属や孤立分子では発現しない単分子接合特有の電気伝導特性の観測に成功した。また、ノイズ計測システムの開発に関して、本年度では装置系を構築し、室温で市販の抵抗器を用いた試験を行いノイズの測定が行える事を確認する事ができた。更に金単原子接点の電気伝導度応じたノイズスペクトルの変化を測定する事に成功した。次の段階としてノイズ強度のバイアス電圧依存性を測定する事が考えられ、単分子接合のノイズ測定向け進展している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、窒素、ピラジンが単分子接合を形成し分子接合系特有の物性を発現する事が確認できた点、ノイズ計測に関しては極低温中で熱雑音を測定する事に成功した点において概ね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ノイズ計測システムの開発に関しては単原子接合の熱雑音の測定に成功したため、バイアス電圧を印加する事によりショット.ノイズの検出を試みる。熱雑音とは異なりショットノイズは複数のバイアス電圧でノイズスペクトルを計測する必要があるため、接合の安定性を改善させ複数のバイアス電圧による測定が可能になるよう配慮する。一方、新規物性探索の観点ではヘリウムの供給が困難となり極低温での実験が困難になる点、実用化の際には室温程度での物性が重要になる点を考慮し、室温もしくは液体窒素温度程度での発現する単分子接合の新規物性につて模索する。本年度得られた窒素原子を介したπ共役分子が有用である知見を活かしπ共役分子と金属原子の複合系の物性探索を行う。
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