研究課題
申請者は、単細胞緑藻Carteria cerasiformis NIES-425における細胞内共生リケッチア、通称"MIDORIKO"を用いて、バクテリア分裂装置遺伝子の細胞内共生に伴うホスト核への水平伝播過程を解明し、ミトコンドリアの進化初期段階を推測することを目的として研究を行っている。平成24年度は以下(1)(2)を実施した。(1)緑藻細胞内リケッチアMIOORIKOの高圧凍結・凍結置換固定を使用した透過電子顕微鏡観察従来リケッチアの観測に用いられてきた化学固定法は、MIPORIKOのホストC.cerasiformisでは細胞内バクテリアの微細構造を保存できないという問題があった。そこでより鮮明な像を得るため、高圧凍結・凍結置換法を使用したMIDORIKO透過電子顕微鏡観察を行った。結果、MIDORIKOは近縁なRickettsia属と類似の細胞構造を有しており、食包膜に覆われず直接ホスト細胞質中に存在するというミトコンドリアと同様の膜トポロジーを持つことを明らかにした(Kawafune et al. 2012. Protoplasma, Published online)。(2)MIDORIKOゲノムの解読による分裂装置遺伝子の同定MIDORIKOゲノムからホスト核に転移した分裂装置遺伝子の探索に用いるため、MID(7RIKOゲノムの解読を試みた。ホスト細胞破砕物から、条件検討の結果遠心分画でMlpeRIKOをホストの核・葉緑体・ミトコンドリアから分離することに成功した。抽出したMIDORIKOゲノムDNAのsingle-endシーケンスをillumina GAIIxにより行い、十分量のリードを得た。現在、リードのdenovoアセンブル及びアノテーションを行っており、これまでに分裂と細胞壁合成に関わるDCWクラスター群遺伝子配列を予測している。
3: やや遅れている
年度当初に予定していた事項はほぼ達成できたが、バクテリア分裂装置遺伝子の同定は現在行っている最中であり、その結果を利用したバクテリア分裂装置の免疫染色を併用した透過電子顕微鏡観察は実施できなかったため。
(1)緑藻細胞内共生リケッチア"MIAORIKO"ゲノム完全解読を行い、その結果を利用して(2)免疫染色を併用した透過電子顕微鏡観察によるバクテリア分裂装置の観測と、(3)ホスト核に転移したMIDORIKO分裂遺伝子配列の探索を行う。現在次世代シーケンサから得られているMIDORIKOゲノムのsingle-endリード由来のコンティグは、ATリッチかつリピートを多く含んでいるため、リード数が十分であるにも関わらず完全解読は困難であることが予想された。よって、MIDORIKOゲノム完全解読のためにpaired-endシーケンスと、さらに必要ならばmate-pairシーケンスを実施する予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (4件)
Molcular Biology and Evolution
巻: 30 ページ: 1038-1040
10.1093/molbev/mst018
Protoplasma
10.1007/s00709-012-0469-4