光触媒の高活性化に向けて、これまで微粒子化と形態・露出面の制御、金属カチオンドーピングによる結晶性向上などを行ってきた。本年度はこれまでの研究をもとにコアに結晶性の高いチタン酸カルシウム、シェルに可視光応答性を有するチタン酸カルシウムを配置したコアシェル型粒子を作成し、高活性な可視光応答型光触媒を作成することを目的に研究を行った。可視光応答性を付与するために金属カチオンをドーピングする際に問題となるのが、ドーピングした金属カチオンが励起電子や正孔のトラッピングサイトとしても働いてしまうことである。そこで、結晶性の高いコアを用いることで、内部で励起された電子が反応場である最表面にスムーズに移動することができると考えた。また、シェル部分で励起された電子はバンド構造の関係から内部へ移動することが難しくなることから表面にとどまる確立が高くなりこちらの電子も効率的に利用できるようになると考えた。粒子均一に1mol%の鉄をドーピングしたチタン酸カルシウム微粒子および粒子表面1-3nmの厚さに1mol%の鉄をドーピングしたチタン酸カルシウムシェルを有する微粒子を作成し可視光照射下における光触媒活性を評価した。結果として高活性な可視光応答型光触媒の合成はうまくいかなかったが、得られた粒子を用いることで、表面欠陥・トラッピングサイトの影響を明らかとした。光は粒子に対して数百nm程度侵入すると考えられているが、表面わずか数nmの厚さに存在する欠陥・トラッピングサイトが光触媒活性の大きな低下を招くことを明らかとした。
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