研究課題
研究課題について下記に詳細な成果を示す。また、昨年度行ったMgCr2O4の相関係と新規ポストスピネル相の構造解析について、American Mineralogistに投稿した。前年度に決定した変形CaFe2O4型FeCr2O4について、高温高圧下の結晶構造を調べるため、岡山大学地球物質科学研究センターの研究グループの協力のもと、SPring-8での高温高圧下その場観察実験を行うための技術習得とその実験で得られるエネルギー分散型XRDデータを取得した。その結果、一気圧では、変形CaFe2O4型構造だが、高温高圧下ではCaFe2O4型構造であることがわかった。その他得られた結果と組み合わせることで、鉱物学・阻石学・結晶学的に様々な応用が可能である。この結果について、国内学会で発表し、英文論文(雑誌名 : American Mineralogist)も受理された。Mg2Cr205の結晶構造について透過型電子顕微鏡を用いて調べた。その結果、この物質の微細構造は、反位相境界を有する結晶学的に珍しい特徴を持っていることがわかった。現在、更に詳細な観察を進めている。また、この物質の単結晶X線回折測定を行った。MgFe2O4系については相関係を決定し、また2つの新規MgFe2O4高圧相とMg2Fe205高圧相の合成に成功した。今後透過型電子顕微鏡を用いて、空間群を制約する。マントル岩石(パイロライト、ハルツバージャイト、MORB)について、高圧相関係を決定した。その結果、1600℃における深さ660km付近のパイロライトの密度は、ハルツバージャイトとMORBより高密度であることが本研究による詳細な比較から明らかになった。この結果は、マントルにおける物質循環を制約するために重要な結果である。この結果について、国内学会で発表し、現在英文論文を執筆中である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度習得した透過型電子顕微鏡の技術を新規ポストスピネル相の微細構造の観察に応用でき、一般的な酸化物では報告されないような特異な構造を有することを発見した。これは習得技術が本研究計画の円滑な進行に貢献したと言える。また、新たに高温高圧下その場観察実験・単結晶構造解析技術を習得し、研究計画を発展させることができた。昨年度開発したLaCrO3ヒーターを用いた高圧下での超高温発生技術を用いて、研究課題の一つであるマントル岩石の高圧相転移に関する研究を行い、過去の研究結果を見直す必要性を示すことができ、計画通り研究を遂行できたと言える。
研究課題の一つであるマントル岩石の高圧相転移に関する研究については、概ね計画していた実験範囲は終えることができたが、予想とは異なった結果も得られており、その結果を補う実験を今後行っていく必要がある。AB204ポストスピネル相の探索では、新規相について上記で習得した実験技術を用いて詳細な解析を行う必要がある。最終的に得られた結果を総括し、研究課題について学術雑誌で発表する。
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American Mineralogist
10.2138/am.2014.4736
Physical Review B
巻: 88 ページ: 1-7
10.1103/PhysRevB.88.205114