研究課題/領域番号 |
12J09375
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
高見 一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(PD)
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キーワード | 最高エネルギー宇宙線 / 中世子星 |
研究概要 |
平成24年度の研究は当初の年次計画通り行う予定であったが、受入研究者との議論により新たな最高エネルギー宇宙線源候補となる天体現象が見つかったこと、初年度に見込まれた最新の観測データの公開がなかったことから当初三年目に行う予定であった個別天体種に関する調査・研究を行うことが最良であると判断し、それを今年度に前倒しして行った。新たな最高エネルギー宇宙線源として連星中性子星合体を検討した。この天体現象は現在世界中で建設中である重力波干渉計により初の重力波検出が期待されている興味深いものであるが、高エネルギー天体現象としても興味深い対象である。この天体現象での最高エネルギー宇宙線生成の可能性を検討したところ、不定性の範囲で可能であるという結論を得、急遽本研究で対象とする宇宙線源にリストアップすることとなった。しかし、重力波はもとより電磁波での観測例もないので様々な物理パラメータに大きな不定性がある。そこで我々は連星中性子星合体からの電磁波放射のスペクトルを理論的に計算し、将来の観測によってパラメータが推定可能であるということを示した。観測が実現すれば、連星中性子星合体が本当に最高エネルギー宇宙線源候補であるかがはっきりする。この内容は日本物理学会第68回年次大会において報告され、現在は国際的に評価の高い雑誌に投稿すべく論文を執筆中である。また、別の最高エネルギー宇宙線源候補としてクェーサーを検討した。我々は従来の理論でうまく説明できずに問題となっていた4C+21.35の短時間変動と高エネルギーガンマ線スペクトルが最高エネルギー宇宙線からの二次的なガンマ線放射で自然に説明できることを示し、クェーサーが最高エネルギー宇宙線源である根拠を一つ提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新たな最高エネルギー宇宙線源候補が見つかったことにより次年度以降に予定されていた研究を一部繰り上げて研究を行ったが、繰り上げた研究は当初初年度に予定されていた研究と手法という点で独立性が高い。このため、研究全体の指針が大きく崩れるということもなく、ペースという点でも順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は新たな最高エネルギー宇宙線源候補が見つかったため次年度以降に予定されていた研究を一部繰り上げて研究を行った。このことにより、次年度は本来初年度に予定されていた研究を行うことになる。予定されていた研究は最高エネルギー宇宙線源を4つの区分に分けて、それぞれの区分をどう区別するかを検討することであった。新たに検討することになった宇宙線源もこの区分の範疇にはいるものであるので、当初の予定通り宇宙線の伝搬を詳細に検討することで観測からの区分け実行の可能性を検討していく。
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