本年度は,本研究で提案するTierra型オンボードコンピュータ(OBC)の実用化に向け,(1)進化の効率化,(2)複雑なプログラムの進化,(3)プログラムの確実な修復に取り組んだ. (1)進化の効率化に対しては,プログラム進化を促進する新しい進化法として,アーカイブ機構を用いて優良な個体を保持し,リファレンス個体と呼ばれる優良個体との相対比較によって非同期に解を進化させる方法を探求した.PICマイコンで実行可能なアセンブリ言語プログラムの進化に提案法と従来の同期進化法を適用して比較した結果,提案法が従来法と比較して実行ステップ数の短いプログラムを生成可能であることを明らかにした. (2)複雑なプログラムの進化に対しては,あらかじめ目的を達成可能なプログラムからの進化だけでなく,ランダムなプログラムからの進化に取り組んだ.具体的には,四則演算,三角関数,指数関数,対数関数を用いて,与えられた座標を通過する関数を生成する関数同定問題に(1)で提案した非同期進化法を適用した.従来の同期進化法,および従来の非同期進化法との比較の結果,提案法が短時間に効率的な解探索が可能であり,各プログラムの評価時間の差が大きい場合に性能が向上する可能性を示した. (3)プログラムの確実な修復に対しては,Tierra型OBCにおいて,宇宙線によるビット反転で正常なプログラムが失われた場合に進化によって正常なプログラムに修復する遺伝的交叉法を提案した.具体的には,2つのプログラムの中で異なる命令語を交叉することで正しい命令のみを含むプログラムに修復することを目指した.PICアセンブリ言語プログラム進化の例題において,進化の過程で一時的に正常なプログラムが失われる状況で正常なプログラムを修復できるかを検証した結果,提案交叉法によって正常なプログラムが進化によって修復可能であることを明らかにした.
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