研究課題/領域番号 |
12J09384
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
市川 宗厳 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | ダイニン / 分子モーター / IFT / 繊毛 |
研究概要 |
前年度に繊毛虫テトラヒメナで組換え体ダイニン2の発現を行うように方針転換を行ったが、それに伴い、当初は想定しなかった障害が複数発生した。特に大きな問題だったのはテトラヒメナの大核内の組換え体遺伝子の割合を上げる必要があったことと、組換え体テトラヒメナ繊毛内でダイニン重鎖が分解を受けやすかったことの二点であった。そこで当該年度は、これらの課題に対し、条件検討や手法の改善を行った。まず、ツールとして、テトラヒメナ用にコドンを改変した蛍光観察・精製・構造解析用の多機能タグ(GFPのループ内にHisタグを挿入したhGFPタグ及びGFPのループ内にHisタグ・SBPタグを挿入したhsGFP・タグ)を構築した。これらのhGFPタグ・hsGFPタグを相同組換えでテトラヒメナ大核内に導入するための薬剤耐性遺伝子カセットも構築した。所属研究室で、テトラヒメナ大核内の組換え体遺伝子の割合を上げる工程(フェノティピックアソートメント)の系を確立するために、軸糸ダイニン重鎖にhGFPタグを付加して検討を行った。その結果、薬剤濃度を段階的に上げていくことで大核内の45コピーの遺伝子を全て組換え体遺伝子に置き換えることができた。また、組換え体テトラヒメナ内でダイニン重鎖の分解が激しかったため、培養温度・精製条件を検討したところ、導入したHisタグ・SBPタグで組換え体軸糸ダイニンが精製できた。これらの結果、組換え体テトラヒメナを株として樹立し、安定して維持することが可能となっただけでなく、テトラヒメナから再現良く組換え体ダイニンを精製できるようになった。テトラヒメナがダイニン重鎖の発現系として使用可能であることを示したものである。所属研究室において、テトラヒメナを用いた組換え体ダイニン精製の系が確立されたので、次年度は細胞質ダイニン2についても精製・運動活性測定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属研究室において、組換え体テトラヒメナからのダイニン重鎖の精製法を確立し、研究の幅は大きく広がったものの、条件検討などに時間がかかり、ダイニン2自体の性質を調べるには至らなかった。次年度は当該年度に構築したテトラヒメナでの発現系をダイニン2に用いることで研究が進むものと確信している。
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今後の研究の推進方策 |
テトラヒメナ相同組換えの系を用い、ダイニン2重鎖や中間軽鎖にhsGFPタグを付加し、テトラヒメ繊毛内でのダイニン2のin vivoでの挙動を共焦点顕微鏡・全反射蛍光顕微鏡(TIRFM)で観察する。テトラヒメナを高密度培養し、ダイニン2の大量精製を目指す。精製できれば、高密度のダイニン2が存在するときのグライディングアッセイの結果を調べるとともにTIRFMで一分子での挙動を調べる。また、粗精製した軸糸抽出液を用いることで、他の制御因子が存在するときの挙動についても調べる。
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