研究概要 |
今年度は、有理チェレドニック代数のハリシュ-チャンドラ両側加群の圏の性質を有限次元半単純リー環の場合の類似という観点から研究した。ハリシュ-チャンドラ両側加群は有理チェレドニック代数の表現の圏で特によい性質を持つ圏0と密接に関係している。有限次元半単純リー環に対してはこれらの圏は圏同値であるが、それぞれに特長があり、そのことを用いて多くの研究がなされている。今年度は有限次元リー環に対してのツッカーマン関手やcompletion関手、twisting関手の類似を定義することを目標としたが、これらの関手の定義は半単純リー環に特有の構造に基づいており、有理チェレドニック代数に対して同様のものを構成することはできなかった。しかし,研究の過程で有理チェレドニック代数の圏0はむしろ表現論的にはq-シューア環であり,さらにそれに有理チェレドニック代数自身の持つ環論的構造があると考えたほうが自然であることが判った. もともとはBGG圏に関する研究も行う予定であったが,最近発表されたエリアス,ウィリアムソン及びシャン,ヴァラニョロ,ヴァスロらによって発表された論文がこの方面で重要であると思われるので,それらを理解することを優先した.これらの結果は半単純リー環及びアファインリー環に関するものであるが,有理チェレドニック代数の圏0とも関係があることがヴァラニョロ,ヴァスロによって示されているので,これらの結果を上の研究に応用できないかとも考えた.しかし,彼らの与えた関係が圏の同値を与えるわけではないこともあり、明確な結果は得られなかった.
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