・合成生物学的手法により、iPS細胞の分化の比率制御を目指した人工遺伝子回路の設計原理の確立 本研究ではiPS細胞からの分化制御の第一段階として、iPS細胞からの外肺葉と中胚葉への分化の比率を制御できるための人工遺伝子回路の設計原理の確立を目的とする。合成生物学的手法では数理モデルの構築、シミュレーション、機能既知の遺伝子からなる人工遺伝子回路の設計を行うことにより、細胞に所望の挙動を行うことができる。 ホニュウ細胞では既存の合成生物学的手法で用いられる大腸菌よりも生育が遅く、1細胞ごとのノイズが大きくなっている。そのため分化比率制御を行うためには、既存の人工遺伝子回路よりも正確な数理モデル構築が必要となる。平成24年度、平成25年度にはその効果として人工遺伝子回路設計に必須なレポーター遺伝子が数理モデル上に組み込まれていないという問題を発見し、レポーター遺伝子が人工遺伝子回路の制御遺伝子に与える影響として、(1)レポーター遺伝子のプロモーターがDNA結合サイトとして制御遺伝子のプロモーターとの間で制御遺伝子群を奪い合う効果、(2)レポーター遺伝子のタンパク質と制御遺伝子のタンパク質がタンパク質分解酵素を奪い合う効果、を見出した。そしてそれらの効果の数理モデル、シミュレーション結果から、生育が早く細胞ごとの個性が少ない大腸菌においてそれらの効果が出ていることを顕微鏡実験により確認している。 そして数理モデル、シミュレーションの成果を取りまとめ、投稿準備中である。
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