本研究ではiPS細胞からの分化制御の第一段階として、iPS細胞からの外肺葉と中胚葉への分化の比率を制御できるための人工遺伝子回路の設計原理の確立を目的とする。合成生物学的手法では数理モデルの構築、シミュレーション、機能既知の遺伝子からなる人工遺伝子回路の設計を行うことにより、細胞に所望の挙動を行うことができる。昨年度に研究実施者が見出した人工遺伝子回路の設計原理は、iPS細胞研究の枠を超え、様々な種類の細胞に対応する基礎原理になると考えられ、平成26年度に研究をとりまとめ査読付き国際会議InCoB2015[1]にて発表を行った。この発表は特に優れた発表としてBest paper awardを受賞した。 なお設計原理が実際の生物において駆動することを確かめる必要がある。そのため平成25年度、私はarabinoseとIPTGという誘導剤濃度変化により挙動が変化する人工遺伝子回路の制御遺伝子群のオシレーターの挙動を観察するために下流に存在するプロモーターの様々な改変を行った。 そして平成26年度にはオシレーターの振動する誘導剤領域が変化することを確認するための新規トラッキング手法を構築した。既存のトラッキング手法は100倍の対物レンズを用いているために1細胞を追跡することが容易であるが、40倍の対物レンズでは1細胞を追跡することは困難である。そのために平成26年度には大腸菌のマイクロコロニー内の一領域をトラッキングする方法を確立した。
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