研究課題/領域番号 |
12J09416
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
渡部 昌平 東京大学, 大学院理学系研究科, 特別研究員(PD)
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キーワード | 超流動の安定性 / ランダウの判定条件 / Bose凝縮体のGreen関数論 / Generalized RPA / Nepomnyashchii-Nepomnyashcii identity / 人工ゲージ場 / 光学格子 / spinor BECの磁化構造 |
研究概要 |
本年度は、(1)Bose系における諸問題の研究成果を論文にした。また、(2)人工ゲージ場を用いたspinor BECの磁化構造創出の研究を遂行。 (1-1)ランダウの判定条件は、超流動体の安定性判定条件の一つである。この条件は、ガリレイ変換を用いるので、不純物のある非一様系には適用できない。我々は以前、この困難を克服する判定法を、密度スペクトル関数を用いて提案。本来、直交基底によってこの量は計算されるが、以前の研究ではポテンシャル障壁に対する励起のトンネル解を用いた。この課題を解決し、両者による帰結が一致することを確認した。 (1-2)Green関数論におけるBose系の諸問題を研究した。(1-2-1)一般化されたRPA理論、多体T行列理論、密度揺らぎを記述するRPA理論を転移温度以下で見通しよく構築することから開始。これらを用い、転移温度の相互作用によるシフト、凝縮体密度の温度依存性、転移の次数等を調べた。(1-2-2)Bogoliubov理論や多体T行列理論等で再現不能な(i)Nepomnyashchii-Nepomnyashchii identityと(ii)秩序パラメータの振幅揺らぎの赤外発散、これらを系統的に再現する近似法を構築。 (2)光学格子の幾何学からくるBloch波動関数の位相と人工ゲージ場の位相、二つの位相による超流動状態の制御と磁化構造の創出を狙った。光学カゴメ格子中のspinor BECの磁化構造の性質を調べ、線形ゼーマンの効果によって磁化構造が誘起されることを解明。実験で蒸発冷却後に実現される制御可能な全磁化の典型例は、線形ゼーマンの効かない全磁化がゼロのものである。この状況で磁化構造を出現させる方法として、スピンに依存した人工ゲージ場の導入を提案。これは、BlochやKetterleのGroupによるRaman補助トンネルによって実現可能。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(i)超流動の安定性に関する判定条件について、先行研究で達成できていなかった課題を解決した点、(ii)Green関数論を用いたBECの基礎理論について、転移温度以下における系統的なRPAへ理論を構築たことと、Nepomnyashchii-Nepomnyashchii identityを再現する系統的な近似理論を構築できたこと、(iii)最新のテーマである人工ゲージ場を伴う光学格子中のspinorBECについて新しいことを提案できたこと。以上を鑑み、おおむね順調に進展していると考える
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今後の研究の推進方策 |
(i)人工ゲージ場を伴う光学格子中のBECについては、最新の実験技術を用いていることもあり、今後もまだまだ進展する可能性がある。より新しい概念を創出するとともに、実現可能性など実験を視野に入れた理論研究を行う必要がある。(ii)超流動の安定性やBose系のGreen関数論は、基礎的な問題であるので、(i)と比較し、より長期的スパンで研究を行う必要がある。このように研究遂行上におけるタイムスケールの違いを意識した研究が必要だろう。
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