研究課題/領域番号 |
12J09423
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研究機関 | 高知工科大学 |
研究代表者 |
針谷 達 高知工科大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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キーワード | プラズマエッチング / ナノ構造体 / ダイヤモンドライクカーボン / ダイヤモンド |
研究概要 |
これまでナノ構造体の形成ためのプラズマエッチング中に、意図しない電極スパッタが行われ基材上に金属が堆積し、この堆積した金属が発現要因になると考えられていた。本研究では、意図しない電極スパッタを電極へカバーを取り付けることで抑制し、新たにエッチングプロセス前にDCマグネトロンプラズマスパッタによる制御された金属堆積プロセスを加えた。この結果、以下に挙げることを明らかにした。 (1)ナノ構造体発現要因は基材上に堆積する金属である。 (2)堆積させる金属の元素が異なることでナノ構造体の形状に違いが現れる。 (3)長時間のプラズマエッチングによるナノ構造体の消失 (3)の結果は、従来の意図しない金属堆積によるプロセスでは、数100nm以上の長尺なナノ構造体が得られていたのに対し、本研究の2段階プロセスではナノ構造体の長さが40nm程度になった後、さらにエッチングを進めることで徐々に短くなり消失したことを意味する。従来法との違いは、基材上へ連続的に金属が堆積するかしないかであり、堆積金属がナノ構造体の長尺化にも影響を及ぼしている可能性を示唆する結果であると考えられる。得られた実験結果をもとに、ナノ構造体の発現メカニズムとして、基材上に堆積した金属と基材のカーボンが反応することで形成されると推測される混合層が影響を与えるとするモデルを提案した。 本研究では、DLC薄膜を基材として作製したナノ構造体を電界電子放出素子として応用することを目指している。このことに加え、本年度では新たな応用として、DLC薄膜の機水性制御の可能性を見出した。 近年DLCは、その生体適合性の高さから再び注目されている材料であり、特に医療器具へのコーティング材料として盛んに研究が行われている。このとき、DLCと水または血液との濡れ性が重要となる。本研究で作製したナノ構造体を持つDLC薄膜のナノ構造体の形状と密度を変えることで、DLC薄膜表面が親水にも疎水にもなることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノ構造発現メカニズムの解析を行うことでナノ構造発現の主要因を突き止め、発現メカニズムのモデルを提案し、研究計画に挙げた研究内容をおおむね遂行した。さらに、DLC表面の撥水性変化など新たな応用展開を示唆する結果を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、ナノ構造体の長尺化及び特性評価を行うとともに、基材となるDLC薄膜の特性向上を目指す。 ナノ構造材料の特性は基材の特性に大きく依存すると考えられる。DLC薄膜の硬質化を目指すことで、ナノ構造材料の機械的強度向上が期待される。 DLC薄膜表面にナノ構造を形成することで、DLC薄膜の撥水性を変化させることが可能であることが分かった。 機水性の変化はナノ構造の形状や密度に依存すると考えられることから、撥水性とナノ構造関係を明らかにし、任意の機水性を得られるナノ構造形成制御を目指す。
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