研究課題/領域番号 |
12J09456
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
田中 誠 立命館大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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キーワード | 評定 / 御前沙汰 / 将軍親裁 / 評定衆 / 奉行人 / 記録 / 文書保管 |
研究概要 |
南北朝期における室町幕府将軍権力の構造を、政務の基盤である官僚層の存在形態とその展開過程から明らかにすることである。さらに、南北朝の動乱の歴史的段階を踏まえ、変容する幕府権力の構造のなかから、将軍権力の本質を問い直し、中世武家権力論に新たな知見を与えることが最終的な目的である。当該年度は以下の成果を得た。 1、南北朝期室町幕府における政務記録の保管・利用と評定衆・奉行人 鎌倉幕府では公家日記・吾妻鏡とも異なる公的な政務の記録が作られていた。こうした記録は官僚層が作成し、彼らの家や幕府の文庫に保管されていた。しかし、南北朝期の記録類に関する研究はほとんどない。実は、裁許状や訴状などに室町幕府の政務記録が引用されており、これらの在り方を知ることができ、こうした記録の記載様式・内容を分析することで、発給文書の分析とは異なる政務形態を明らかにすることができる。本研究については学内の研究会を通じて検討を行った。 2、室町幕府評定衆・奉行人における身分秩序の形成と訴訟制度 室町幕府初期の行政機関は南北朝末期には解体するが、戦国期にまで奉行人の身分を表す名称として機関名が残存する。これまで、行政機関の形骸化と機関名称の身分化とを体系的に関連づけた研究はない。2代将軍義詮期には幕府最高議決機関である評定と御前沙汰が併存していた。観応の擾乱の影響によって、評定に出仕する資格のない奉行人を義詮は積極的に評定に登用し、自己の政権の基盤を確立させていったことを明らかにした。また御前沙汰は尊氏の臨席する裁判機関であり、尊氏に仕える奉行人を登用していたことを解明した。本研究は2013年2月歴史学研究会中世史部会例会において研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記1、の研究についてはすでに論文執筆中であり、上記2、の課題のため学外の研究会で報告を行い研究を進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
上記1、の研究を行ったことにより、室町幕府が残した史料そのものの性格が十分に吟味されていないまま、研究に使われていることが浮かび上がった。室町幕府が残した史料は、法令集や文書控え集など多数存在するが、そうした史料そのものの性格を検討することで、室町幕府の法や訴訟制度に迫ることができる。評定衆や奉行人はそうした史料の作成と保管を担っており、その特質に迫るうえでもこうした史料の研究は欠かせない。 前田育徳会尊経閣文庫、国立公文書館内閣文庫、東京大学史料編纂所などで史料調査を行い、室町幕府官僚層の特質に迫ることを目的とする。
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