研究概要 |
地球は形成時、集積エネルギーによる温度の上昇によりほぼ全溶融していたと考えられている。この時、地球マントル中の親鉄性元素存在度等から地球のマントルとコアは高圧高温環境下にて化学平衡に達していたと考えられており、地球のマントルを構成するケイ酸塩と地球の核を構成する金属鉄合金について、その液体-液体間化学反応を高圧環境下で実験的に調べることは、地球形成・進化の過程を知る上で重要なテーマである。しかし、地球内部を模す超高温高圧環境下での実験の技術的な困難さもあり、コアとマントルの液相間化学反応はこれまで主に低圧低温の実験データを外挿することによって議論が行われてきた。本研究では、コア-マントル間の化学反応にとって重要なパラメータである温度、圧力について、初期地球においてコア-マントルの化学反応が起こりうる全温度圧力範囲にて外挿無しで液相間化学反応の実験を行い、実際の地球の構造・進化の理解をめざす. 研究期間を通じて、超高温高圧条件下における液体金属鉄-ケイ酸塩メルト間の元素分配について、1.ダイアモンドアンビルセルを用いた超高温度の測定技術2.FE-EPMAによる微小サンプルの化学分析3.LA-ICP-MSによる微量元素の定量分析技術の実験系の確立を行った。 さらに、これらの技術を用い、138GPa,5500Kという、コア-マントルの化学反応が起こりうるほぼ全ての温度圧力条件での実験を成功させた。その結果、地球中心核には1.酸素,ケイ素が約10%入っていること、2.放射性熱源であるカリウムは最大で10ppmしかコアに入らないこと、3.今まで液体金属鉄には入らないと思われていたマグネシウムも高温では数wt%金属鉄に分配され得ること、などを明らかにした。 本研究成果は多数の国内学会及び国際学会にて発表を行った。また、成果は論文として国際誌に投稿中である。
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