研究課題/領域番号 |
12J09531
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
安岡 有理 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミクスユニット, 特別研究員(PD)
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キーワード | 脊索 / 原口 / 進化 / 発生 / 転写制御 / brachyury / ChIP-seq / RNA-seq |
研究概要 |
1)レポーター解析 Xenopus tropicalisの実験系を新たに所属研究室に立ち上げ、まずはbrachyuryおよびXenopus特異的に倍加したbrachyury2の発現パターンを、3'UTR領域に対するプローブを用いた全胚in situ hybridizationによって詳細に検討した。その結果、brachyuryは主に後方中胚葉、尾芽領域で発現し、brachyury2は主に脊索領域で発現することを見出した。そこで、Xenopus胚におけるI-SceIメガヌクレアーゼを用いたトランスジェニックレポーター解析により、brachyuryおよびbrachyury2の周辺ゲノム配列から選んだエンハンサー候補配列の活性を調べた結果、脊索エンハンサー活性を示す領域をいくつか同定した。 2)遺伝子発現解析 コユビミドリイシサンゴの初期胚からプラヌラ幼生、ポリプにわたって、brachyuryの発現パターンを全胚in situ hybridizationで調べたところ、brachyuryは初期原腸胚から原口唇領域で発現を開始し、その発現はポリプまで口唇領域に維持されることを見出した。これは、同じ刺胞動物のイソギンチャクと同様に、サンゴでもbrachyuryが真正後生動物共通の発現パターンをもつことを示している。 4)抗体の作成および検討 Xenopus、ホヤ、サンゴのbrachyuryに対する抗体作製のため、T-boxよりC末端側領域すべてをGSTに結合させた融合コンストラクトを作成し、大腸菌においてタンパク質の発現を確認した。そして、そのコンストラクトを抗原に用いた抗体作製を外注した。 抗TLE抗体(脊椎動物のTLEホモログTLE1,TLE2,TLE3,TLE4すべてを認識する汎用性の高い抗体)が他の動物のTLEにも交叉するのかを検討したところ、ホヤ、イソギンチャクのTLEにも反応することをウエスタンブロッティングにより確認した。これにより、抗TLE抗体が全動物でシス制御領域の同定に使える可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
抗brachyury抗体作製用の抗原コンストラクトの確認はできたが、抗体はまだ完成していない。Xenopusにおけるbrachyuryおよびbrachyury2の脊索エンハンサーは一部見つかったものの、まだ完全には同定できていない。サンゴで新たな知見は得られたが、ナメクジウオやギボシムシのChIP-seq,RNA-seqがまだ実行に移せていない。
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今後の研究の推進方策 |
脊索エンハンサーをゲノム全体から同定するために、Xenopus tropicalis尾芽胚を尾芽、頭部、胴部背側、胴部腹側などに切り分けて、p300、TLE、CTCFといった転写制御因子に対する抗体でChIP-seq実験を行う。その上で、レポーター解析によってエンハンサー活性を検討する。その際、扱いが簡単なXenopus laevis胚を用いることも検討する。brachyuryの機能を詳細に検討するために、機能阻害実験を各動物種で行い、RNA-seq解析を行う。抗brachyury抗体は完成し次第順次品質を確認し、ChIP-seq解析を行う。ナメクジウオのサンプリングおよび機能阻害実験のため、台湾アカデミアシニカのJr-Kai Sky Yu氏の元で出張実験を行うことも検討する。
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