研究概要 |
セマフォリン3A (Sema3A)は、発生期の神経回路形成時に軸索を適切に標的細胞へ導く分泌型軸索ガイダンス分子として広く知られている。申請者が所属する研究室では、Sema3Aの従来知られていた機能のみならず、樹状突起スパインの成熟促進といった機能を有することを明らかにしてきた(Sasaki et al., Neuron, 2002 ; Morita et al., J Neurosci, 2006 ; Yamashita et al., J Neurosci, 2007 ; Yamashita et al., Nat Commun, 2014)。 はじめに報告者は、Sema3Aがポストシナプス構造を成熟させることから、Sema3Aシグナルのシナプス伝達における生理機能に着目をした。その結果、新たにSema3Aシグナルが記憶の獲得・維持の分子基盤といわれているAMPA型受容体(AMPARs)をシナプスへ移行させることを明らかにした。さらに、in vivoにて受動的回避行動試験により、Sema3Aシグナルが記憶の獲得・維持に関与する事を示唆する結果も得た。これらの結果は、シナプス可塑性におけるSema3Aシグナルの重要な役割を示している。このような背景から、本研究の目的は、Sema3Aが記憶の獲得・維持においてどのような役割を担うかを明らかにすることである。当該年度においては、記憶の獲得・維持の過程でSema3Aが分泌されるか否かを検討する新たな実験系を確立し、ラットが記憶を獲得する際にSema3Aが分泌されるという現象を新たに明らかにしつつある。さらに、Sema3Aの機能を阻害後、受動的回避行動試験を行い記憶の獲得が障害されることも明らかにした。これらの知見は、Sema3Aシグナルが記憶の獲得に重要な役割を果たすことを示唆する。
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